日本と世界の電力事情 ― 原子力の課題と持続可能な未来を考える

話題

日本は今、電力の安定供給と脱炭素化という二重の課題に直面しています。

原子力発電はわずか約7%の比率にとどまっていますが、政府は「安定電源」として維持・発展させようとしています。

一方で、放射性廃棄物の問題や安全性への懸念は解決していません。

本記事では、日本の現状と世界の電力事情を整理し、未来のエネルギーのあり方を考えていきます。

日本の電力構成と原子力の位置づけ

  • 石炭・LNG火力:全体の約7割を占め、CO₂排出量の大きな要因。
  • 再生可能エネルギー:約20%(太陽光が中心、風力はまだ小規模)。
  • 原子力:全体の約7%。再稼働の遅れから低水準が続いている。

政府の「2030年エネルギーミックス目標」では原子力を20〜22%に増やす計画ですが、実現性には疑問が残ります。

原子力発電の課題

1. 安全性

福島第一原発事故から10年以上経ちますが、廃炉は数十年単位で続きます。地震・津波リスクがある日本で、再び大事故が起きれば被害は計り知れません。

2. 放射性廃棄物

  • 使用済み燃料は数万年の管理が必要。
  • 日本には最終処分場がなく、中間貯蔵でしのいでいる状況。
  • 無害化技術(核変換など)は研究段階で、実用化の目途は立っていません。

3. コスト

「安い電源」とされがちですが、廃炉費用や事故対応費を含めると実際には高コスト化しています。

原子力を推進する理由

それでも政府や産業界が原子力を推進しようとするのは、次のような理由からです。

  • エネルギー安全保障:燃料輸入に依存せず数年分の備蓄が可能。
  • 脱炭素目標:CO₂を出さない安定電源として必要。
  • 産業界の要請:製造業やデータセンターが安定した大量電力を必要としている。
  • 技術維持:原子力を完全に止めると人材・産業基盤が失われる。

世界の電力事情

世界全体

  • 石炭:約36%
  • ガス:約23%
  • 水力:約15%
  • 原子力:約9%
  • 太陽光:約6%
  • 風力:約7%

👉 世界の電力は依然として化石燃料に依存しています。

地域別の特徴

  • 中国:石炭依存度が高いが、太陽光・風力導入で世界トップ。
  • 米国:天然ガスと再エネが主力、原子力は約18%。
  • 欧州:フランスは原子力70%依存、ドイツは脱原発路線。
  • インド:石炭が約70%、再エネ拡大途上。
  • 日本:火力中心、再エネ停滞気味、原子力は低比率。

今後の見通し

  • 再エネ拡大:IEAの予測では2030年に再エネが世界の40%近くに。
  • 原子力の再評価:欧米・中国・インドで次世代炉(SMR)などが開発中。
  • 電力需要の増加:AI・データセンター・EVの普及で需要は拡大。

日本が取るべき道

  1. 短期的対応:火力+再エネで当面を維持し、原子力依存を拡大させない。
  2. 中期的対応:再エネ+蓄電池・水素インフラを整備。
  3. 長期的対応:核融合や次世代技術を視野に入れつつ、「廃棄物を残さない電源」を目指す。
  4. 社会的合意形成:電気料金の上昇を「安全のためのコスト」として社会全体で分担する。

おわりに

日本は「エネルギーの持続性」と「社会の持続性」を同時に問われています。

原子力のリスクと廃棄物の課題を直視しつつ、再エネの拡大と効率的な電力利用を進めることが求められています

未来の世代に責任を果たすために、私たちは「安全」「安定」「持続可能性」を軸にしたエネルギー選択をしていかなければなりません。

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