人類の食卓に欠かせない「魚」。その魚をどう確保するかは、
世界人口は2025年現在で約80億人。
しかし、天然漁業資源はすでに限界に近づいています。
では、未来の人類の魚食を支えるのは何か?その答えは「養殖」
第1章:近代水産学が明らかにした新しい発見
1. ゲノム選抜育種(Genomic Selection)
近代水産学の最大のトピックの一つは「ゲノム選抜育種」です。
従来の育種では、
ゲノム選抜は、
- ブリ類:成長率10〜15%向上、病害耐性強化。
- ヒラメ:ウイルス性出血性敗血症(VHSV)
耐性を持つ個体を選抜、生残率20〜30%改善。 - サケ(ニジマス・アトランティックサーモン):寄生虫・
細菌性冷水病耐性を持つ系統を作出、飼料効率10〜15%改善。
つまり、ゲノム選抜は「
2. 魚由来の腸内細菌と「魚の腸活」
AISTの研究では、
人間で「ヨーグルトが腸にいい」というのと同じ発想ですが、
3. 栄養強化ワムシと全雌化技術
仔魚の餌として利用されるシオミズツボワムシを、
また、クロソイでは「全雌化」に成功しました。
4. 養殖魚の疾病対策と天然物質
紅藻や海洋細菌由来の天然物質に、抗酸化・
第2章:養殖魚と天然魚の境界線
養殖魚は、しばしば自然環境へ逃げ出すことがあります。
1. 生態系への影響
- 遺伝子汚染:人間に都合のよい遺伝子(早熟・病気に弱いなど)
が天然集団に混ざる可能性。 - 捕食・競合:餌を奪ったり、新しい競合種として影響を与える。
- 病気の媒介:養殖場で広がる病気が天然魚に拡散する。
ノルウェーでは、
2. 人体への影響は?
多くの人が心配するのは「養殖魚と天然魚が交配したら、
科学的には、遺伝子がそのまま人に移ることはありません。
一方で注意すべきは「寄生虫や細菌」。
第3章:2050年の需要と供給シナリオ
世界人口の増加と魚食文化の広がりにより、
下の図は、天然漁業と養殖漁業の生産量、
- 天然漁業:横ばい〜微減(90百万トン程度で頭打ち)
- 養殖漁業:急増(1990年10百万トン → 2050年160百万トン予測)
- 総供給:2050年には約250百万トン
- 需要:2050年には約240百万トン
つまり、養殖がなければ2050年には魚不足が確実に起きます。
第4章:養殖の課題と解決策
1. 魚粉依存
養殖魚の餌として使われる魚粉・魚油は、
2. 環境負荷
養殖場の排泄物や薬剤使用は、周辺環境への負荷となります。
3. 社会受容性
ゲノム選抜や全雌化などは「遺伝子操作と誤解」されやすいため、
終章:未来の魚食をどう守るか
結論として、養殖は今後の人類にとって不可欠です。しかし「
私たちが考えるべきは、「養殖を推進するかどうか」ではなく、
「いかに持続可能で安全な養殖を育てていくか」 です。
2050年、
参考文献
- FAO. The State of World Fisheries and Aquaculture (SOFIA reports, 2022–2023).
- 日本水産学会誌「進歩賞」関連記事(2024年)。
- AISTプレスリリース:ニジマス腸内からの酪酸産生菌の発見(
2025年)。 - PLOS ONE (2025). Environmental drivers of salmon survival in the western North Pacific.
- Marine Policy (2025). 日本における海洋保護区の社会的特性。
- Frontiers in Marine Science (2025). レジームシフトと暗黒データの解析。
- 各種ニュース記事(AP News, The Guardian, Financial Times)による漁業資源・気候変動関連報道。
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