はじめに:なぜ「賃金アップ」が叫ばれるのか
近年、日本では「賃金を上げよう」
しかし、一方で家計の実感として「
この記事では、
- 賃金を上げると経済はなぜ良くなるのか
- なぜ日本では実感として豊かさが感じられないのか
- 賃金上昇が企業倒産につながるリスクはあるのか
- 韓国やアメリカなど海外の事例はどうか
- 日本が進むべき方向は何か
という5つの問いに答えながら、
第1章:賃金を上げると経済は良くなるのか?
1-1. 賃金と経済の関係
賃金は家計にとっての「収入」であると同時に、
特に日本のGDPの約60%は「個人消費」が占めています。
1-2. 税収と社会保障への効果
賃金が上がると所得税収が増え、消費税収も増加します。
1-3. デフレからの脱却
日本が長年苦しんできたデフレは、「物価が上がらない → 企業は値上げできない → 賃金も上がらない → 消費も伸びない」という悪循環でした。
第2章:なぜ日本では賃金が上がらないのか?
2-1. 長期停滞とデフレマインド
バブル崩壊以降、日本は「失われた30年」
2-2. 労働市場の硬直性
- 年功序列型賃金制度が根強く残っており、
スキルや成果に応じた賃上げが弱い - 非正規雇用が全体の4割を占め、平均賃金を押し下げている
- 労働組合の交渉力低下
これらが賃金停滞の背景にあります。
2-3. 中小企業の体力不足
大企業は内部留保や海外収益を活用して賃上げできても、
第3章:賃金と物価の関係 ― 実質賃金が下がる現実
3-1. 名目賃金 vs 実質賃金
- 名目賃金:額面上の給料
- 実質賃金:物価を考慮した生活水準
名目賃金が3%上がっても、物価が5%
3-2. 物価上昇の要因
- エネルギー・食料の輸入コスト高
- 円安による輸入品価格の上昇
- コストプッシュ型インフレ
結果として生活必需品の値上がりが家計を直撃し、「
3-3. スタグフレーションのリスク
賃金が伸びず、物価だけが上がる状況は「スタグフレーション」
第4章:賃上げが企業に与えるリスク ― 倒産の現実
4-1. 倒産事例(日本)
- 東京商工リサーチによると、最低賃金引き上げ後に「
人件費負担が要因となる倒産」は毎年増加 - 特に飲食・小売・介護・運送業で顕著
4-2. 企業の対応
- 人員削減(正社員を減らし非正規化)
- 自動化・デジタル化投資
- サービス縮小(営業時間短縮など)
- 海外移転
企業は潰れる前にコスト削減でしのぎますが、
第5章:韓国の事例 ― 急激な賃上げの失敗
5-1. 文在寅政権の最低賃金政策
2017〜2019年にかけて、最低賃金を2年で30%
5-2. 結果
- 零細企業の廃業ラッシュ
- アルバイトや非正規雇用の労働時間削減
- 「賃金は上がったが仕事がなくなった」という声が急増
5-3. 評価
IMFも「急激すぎる引き上げは雇用にマイナス」と指摘。
第6章:アメリカの事例 ― 賃上げと自動化
6-1. カリフォルニア州などの高賃金
最低賃金15ドル超を導入。
6-2. 結果
- ファストフード業界で自動注文機・ロボット調理が普及
- 雇用は減ったが、新しい形での雇用(メンテナンス・
システム開発)が増加 - 産業構造がシフトし、経済は適応
第7章:比較から見える教訓
国 | 政策 | 結果 |
日本 | 段階的に引き上げ | 倒産増加、価格転嫁の難しさ |
韓国 | 急激な引き上げ | 零細企業の廃業、雇用減少 |
アメリカ | 州ごとに引き上げ | 自動化と産業シフトで適応 |
👉 日本は「中小企業比率が非常に高い」ため、
第8章:日本が進むべき道
- 段階的な賃上げ
一気ではなく、企業体力に合わせて継続的に。 - 価格転嫁の容認
「安さ至上主義」から脱却し、適正価格を社会で共有。 - 中小企業支援
補助金・税制・取引の公正化。 - 生産性向上
デジタル化・自動化・付加価値経営で人件費を吸収。
第9章:生活者としてできること
- 「安ければいい」ではなく「
適正価格で持続可能なサービスを選ぶ」 - 地元企業や中小企業を支援する消費行動
- 労働者自身もスキルアップや転職活動を通じて市場価値を高める
第10章:まとめ
- 賃金上昇は経済に不可欠だが、
スピードと方法を誤ると企業倒産や雇用減少を招く。 - 韓国は急激にやりすぎて失敗、アメリカは自動化で吸収、
日本はまだ過渡期。 - 日本が進むべきは「段階的な賃上げ+生産性改革+
価格転嫁の容認」。 - 最終的に大切なのは「生活者の実感として豊かになること」。
コメント