■ はじめに:万博の象徴「大屋根リング」は残るのか?
2025年の大阪・関西万博のシンボルといえば、
巨大な木造建築「大屋根リング(Grand Ring)」です。
会場をぐるりと囲むその姿は、
“未来と自然の共生”
しかし最近、「閉会後はどうするの?」「解体されるの?」
本記事では、この「大屋根リング」の構造や目的、
そして閉会後の行方・保存計画・活用案について、
最新情報をもとにわかりやすく解説します。
■ 1. 大屋根リングとは?そのスケールと象徴的意味
まず、
- 全周:約 2km
- 直径:約 675m
- 建築面積:約 61,000㎡
- 高さ:約 12〜20m
- 構造:木造トラス構造(世界最大級)
- 使用木材:国産材約7割(スギ・ヒノキなど)
- 設計者:藤本壮介氏(建築家)
この「大屋根リング」は、会場全体をぐるりと囲む巨大な木の輪。
上部には歩行者用のデッキ「スカイウォーク」も整備され、
来場者が木の香りと共に未来を眺められる空中回廊として機能しま
また、「太陽・地球・生命の循環」をモチーフとしており、
木という再生可能資源を使うことで「持続可能性」
■ 2. 万博閉会後、大屋根リングはどうなる?
▼ 現在の公式方針
2025年の万博終了後(2025年10月予定)、
大屋根リングはそのまま残るわけではなく、
「レガシー(遺産)活用」
万博協会はすでに、
「閉会後の利活用提案」を民間企業や団体から募集しています。
その中で出てきたのが、以下のような複数の構想案です。
■ 3. 検討されている主な活用案(提案例)
提案内容 | 具体案 | メリット | 課題 |
部分保存+公園化案 | 北側や海側の一部を残して、展望デッキ・散策路として活用 | 景観維持、観光資源として有効 | 木材の耐久性・維持コスト |
アリーナ・イベント施設化案 | 大屋根構造を活かし、屋外アリーナやライブ会場に転用 | 商業収益化が期待できる | 騒音・交通量・採算性 |
ホテル・リゾート複合化案 | 施設をホテル・ショップと一体化し観光拠点に | 万博レガシーとしての持続可能性 | 初期投資・民間資金負担 |
一部保存+木材再利用案 | 解体後、木材をベンチ・街路灯・公共施設に転用 | 循環型資源利用、地域連携 | 再加工コスト、強度・デザイン性 |
記念モニュメント化案 | 小規模で象徴的な部分だけを残し、記念公園化 | 景観性重視、管理しやすい | 万博の象徴性が薄まる |
これらの案は、2025年中に最終候補を絞り、
2026年以降に本格着工が始まる見通しです。
■ 4. 「部分保存」案が有力視される理由
完全保存を望む声もありますが、
現実的には「部分保存+再利用」の方向でまとまりつつあります。
その理由は以下の通りです。
- 維持費が高い
全長2kmの木造建築を維持するには、
防腐・防虫・耐震補強などに多額のコストがかかります。 - 利用需要とのバランス
万博終了後は来場者が減るため、
全体を残しても維持運営するだけの利用頻度が見込めません。 - 木材の耐用年数
屋外での使用を前提にした木材でも、
長期耐久性には限界があります。
安全面からも、定期的な更新・部分交換が必要です。
こうした現実的課題を踏まえ、
**「シンボルとして一部残す+他は再利用」**
■ 5. 再利用の方向性:木材が第二の命を得る
解体した部分の木材は、
以下のような形で「第二の命」を与える計画も検討されています。
- 万博記念公園や大阪府内の公共施設のベンチ・休憩所に転用
- 木材を削り直して地域の学校や公園の遊具として再利用
- ショッピングモールや駅施設の内装素材に活用
- 部材の一部をアート作品・モニュメントとして展示
こうした動きは「サステナブルな建築文化」
建築関係者の間でも「日本の木造技術の見本」
■ 6. 保存場所の候補と方向性
現時点で、保存候補として挙がっているのは以下のエリアです。
- 北西エリア(海側):眺望性が高く、観光客がアクセスしやすい
- 中央ゾーン:シンボル広場と接続しやすく、イベントにも活用可
- 南側一部:耐久性・構造安定性が高いとされる
大阪府の吉村知事も「一部は残す方向で検討中」と発言しており、
環のうち約200〜
■ 7. 万博跡地全体の再開発計画と関係性
大屋根リングの扱いは、
万博跡地の再開発プランと密接に関係しています。
現在、万博会場「夢洲(ゆめしま)」では、
閉会後に以下のような再整備構想が進んでいます。
- 国際イベント複合施設の建設(アリーナ・展示場)
- MGMリゾーツによる統合型リゾート(IR)開業予定(
2030年頃) - 環境・教育施設、未来技術実証拠点
- 海上アクセス整備(夢舞大橋・シャトル航路)
この中で、大屋根リングは
「環境共生・木造技術の象徴」
つまり、**IR(統合リゾート)と共存する“
観光拠点化する未来像も現実味を帯びています。
■ 8. 課題と懸念:維持管理と採算性
ただし、保存・再利用にはいくつかの課題も指摘されています。
- 維持管理コストの重さ
木造建築は防水・防虫対策が欠かせず、
年間の維持費が数億円規模にのぼるとの試算も。 - 安全性の確保
風・地震・塩害などへの耐久性が課題。
特に夢洲は海に面しており、環境条件が厳しい。 - 採算の見通し
観光客がどれだけ訪れるかで、運営費回収の見通しが大きく変わる。
これらをクリアできるかどうかが、
「保存か撤去か」の分かれ道になるでしょう。
■ 9. 他都市の成功例から学ぶ「レガシーの活かし方」
過去の万博・オリンピック会場では、
“レガシー活用”が成功した例と失敗例の両方があります。
都市 | 施設名 | 活用状況 |
ロンドン(2012五輪) | クイーン・エリザベス・オリンピックパーク | 一般開放+住宅・商業再開発で成功 |
上海(2010万博) | 中央展示館 | 博物館・イベントホールに転用 |
名古屋(2005愛知万博) | 愛・地球博記念公園 | 公園・スタジオジブリパークとして再生 |
リオ(2016五輪) | 各競技場 | 活用進まず「廃墟化」状態 |
大阪万博も、これらの歴史を踏まえて、
「維持できる形で残す=半分保存+半分再利用」
■ 10. まとめ:大屋根リングは「未来への架け橋」になる
万博が終わっても、「大屋根リング」は終わりではありません。
- 全体を残すことは難しくても、
一部保存+木材再利用によって“形を変えて生き続ける” - 万博の理念「いのち輝く未来社会のデザイン」を、
建築として残すレガシーにできるかが鍵
つまり、大屋根リングは単なる建物ではなく、
「未来へ続く木の輪」なのです。
2025年以降、その輪がどのような姿で残るのか。
大阪のまちづくり、そして日本の建築文化を映す鏡として、
今後も注目していく価値があります。
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