初心者でも分かる!なぜ金の値段は上がっているのか?〜世界の動きと数字で読み解く〜

 

2025年現在、金(ゴールド)の価格は世界的に史上最高水準に達しています。

2025年9月25日時点での国際金価格は1トロイオンスあたり約3,740ドル前後で推移し、日本国内では1gあたり約19,700円という過去最高水準に近い価格が付いています。

これまで金は景気が悪くなった時や不安定な時に買われる傾向がありました。ところが今回は「株も高い、ドルも強い」状況下で金まで高騰しており、非常に注目されています。

本記事では、初心者でも分かるように金の値上がりの背景を数字を交えて解説します。また、金のメリット・デメリット、代替となる資産、そして個人投資家がどう考えればよいかを丁寧に説明します。

第1章:金とは何か?〜古代から現代までの役割〜

金は紀元前から人類が価値を認めてきた金属です。エジプトのツタンカーメンの黄金のマスクや、ローマ時代の金貨など、歴史を通じて富や権力の象徴として用いられてきました。

19世紀には「金本位制」として、各国通貨の価値を金の量で裏付ける制度が世界的に採用されていました。米ドルも長く金と結びついていましたが、1971年にアメリカのニクソン大統領が金本位制を終了(ニクソン・ショック)。それ以降、金は通貨の裏付けではなく「無国籍の資産」として市場で取引されるようになりました。

この「どこの国の信用にも依存しない」という特性こそが、金が今も「安全資産」として注目される理由です。

第2章:2025年の金価格の現状

•2025年9月時点の国際金価格:約3,740ドル/オンス

•年初からの上昇率:約**+15%**(2025年1月初の約3,200ドルから上昇)

•日本国内の店頭小売価格:1g=19,700円前後(田中貴金属の店頭小売価格より)

特に日本では「円安」の影響でドル建て以上に値上がりしています。為替レートが1ドル=160円近辺となっており、円ベースでの金価格は過去最高圏です。

第3章:なぜ金は上がっているのか?5つの要因

(1) 中央銀行の大量購入

世界黄金協会(World Gold Council, WGC)の統計によれば、2022年以降の中央銀行による金購入は年1,000トン超と、過去数十年で例のない高水準が続いています。

•2025年Q1:244トンの純購入

•2025年Q2:166トンの純購入

主な買い手はポーランド、中国、トルコ、カザフスタンなどです。

たとえばポーランドは2025年前半だけで67トン増やし、総保有量は515トンに到達しました。

各国が金を増やす理由は、ドルやユーロに頼りすぎることのリスクを下げたいからです。米国債の代わりに金を持つことで、政治・経済リスクから準備資産を守る狙いがあります。

(2) インフレと通貨安の影響

世界的にインフレ率が高止まりしています。

•米国:2025年夏時点でインフレ率は3%台

•ユーロ圏:2.8%前後

•日本:3%前後(食品・エネルギー価格が押し上げ要因)

物価が上がるとお金の価値は下がります。

しかし金は「実物資産」であり、インフレ局面でも相対的に価値を保つため、投資マネーが流入します。

日本では円安が加わり、さらに価格を押し上げています。

(3) 世界情勢の不安

ロシア・ウクライナ戦争や中東情勢の緊張など、地政学的リスクは依然高い状況です。

さらに米中対立や貿易摩擦、AI・半導体分野の覇権争いも続いており、投資家は「有事の資産」として金を買います。

(4) 米国の利下げ観測

米連邦準備制度理事会(FRB)は2025年にかけて利下げスタンスを取ると見られています。

金は利息を生みませんが、金利が下がると「ドルを持っていても利回りが少ない」ため、金が相対的に魅力を増します。

(5) ETFや投資資金の流入

金を裏付けとするETF(上場投資信託)への資金流入が拡大しています。

2025年上期だけで約397トン相当の資金が流入したと報告されています。

個人投資家も積立やETFを通じて参加しやすくなり、需給がさらにタイトになっています。

第4章:各国の金保有量ランキング(上位20)

(2025年9月WGCデータ、単位:トン)

1.米国:8,133.5t

2.ドイツ:3,350.2t

3.イタリア:2,451.8t

4.フランス:2,437.0t

5.ロシア:2,332.7t

6.中国:2,298.5t

7.スイス:1,039.9t

8.インド:900.0t

9.日本:845.9t

10.トルコ:634.7t

11.オランダ:612.4t

12.ポーランド:515.4t

13.台湾:422.4t

14.ポルトガル:382.6t

15.ウズベキスタン:364.5t

16.サウジアラビア:323.1t

17.英国:310.2t

18.カザフスタン:306.1t

19.スペイン:281.5t

20.オーストリア:279.9t

第5章:金のメリットとデメリット

メリット

•インフレや通貨安に強い

•世界中で価値が認められている

•株や債券と相関が低く分散投資に有効

デメリット

•利息や配当がない

•短期では価格変動が大きい

•現物は消費税や保管料が必要

•日本では売却益に課税あり(現物は総合課税、ETFは分離課税20.315%)

第6章:金以外の「安全資産」

•銀・プラチナ:希少性はあるが工業需要に左右されやすい

•スイスフラン・日本円:安全通貨として有事に買われやすい

•不動産:インフレに強いが流動性が低い

•ビットコイン:デジタルゴールドと呼ばれるが変動が大きい

第7章:個人投資家はどう考えるべきか?

初心者が金投資をする場合は「全資産の一部(5〜10%程度)を金にする」程度が目安とされています。

•長期で保有したい人 → 現物(金地金・コイン)や純金積立

•短期で売買したい人 → 金ETF(例:東証1540)

•少額からコツコツ → 純金積立や投資信託

「資産の保険」と考えることが重要です。

まとめ

金の値上がりは、

•中央銀行の買い増し

•インフレや通貨安

•世界の不安定さ

•投資マネーの流入

といった要因が重なった結果です。

金は“最後の安全資産”として、今後も世界中で重要な位置を占め続けるでしょう。

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