第1章:序章 ― 日本の外国人受け入れ現状と見えていないリスク
ここ10年ほどで、
さらに深刻な人手不足を背景に、
- 2019年に創設された「特定技能」制度
- 技能実習から移行する「育成就労制度」(2024年に成立、
2027年施行予定) - そして特定技能2号の対象分野拡大(家族帯同可能、
在留更新上限なし)
これらは一見「労働力対策」に見えますが、
ところが、その一方で「
日本人であれば当然「日本の法律で裁かれる」のに対し、
現状、日本が犯罪人引渡し条約を結んでいるのは アメリカと韓国の2か国のみ。
主要な外国人労働者の送出国である中国、ベトナム、フィリピン、
経済界の強い要望で「人を入れる」政策ばかり先行し、
これがいまの日本の立ち位置です。
第2章:ヨーロッパの移民政策の歴史 ― 「人を入れてから考える」の連鎖
「移民政策の遅れ」がどんな結末を招くかを理解するためには、
ドイツ ― ガストアルバイター(客員労働者)の受け入れ
1950年代、戦後復興と経済成長(いわゆる“経済の奇跡”)
当初の想定は「数年働いて祖国に帰る」一時的な労働力。
フランス ― 旧植民地からの移民
フランスでは1950〜70年代にかけて、
イギリス ― コモンウェルスからの移民
イギリスは旧植民地との歴史的関係から、カリブ諸国、インド、
共通する流れ
- 経済優先で大量受け入れ(「一時的」なはずが定住化)
- 統合政策の遅れ(言語教育、住宅政策、治安対策が後追い)
- 社会不安・治安悪化(若年失業、暴動、犯罪率上昇)
- 司法協力の強化(欧州逮捕状、ユーロジャスト、ユーロポール)
ヨーロッパは「先に人を入れて、後で問題が噴き出し、
第3章:日本の“建前と実態” ― 移民政策ではないと言い張りながら
日本政府は「日本は移民国家ではない」と繰り返しています。
しかし実態を見れば、
技能実習制度
1990年代から続く技能実習制度は、「国際貢献」
特定技能制度(2019年)
2019年には「特定技能」制度が創設され、
育成就労制度(2024年成立、2027年施行予定)
技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」
司法協力は置き去り
ここまで受け入れは進んできましたが、
- 犯罪人引渡し条約:米国・韓国の2か国のみ
- 中国、ベトナム、フィリピン、
ブラジルなど主要な送出国とは未締結 - 逃亡すれば「日本で裁けない」リスクが現実に存在
ヨーロッパは移民問題が深刻化した後に「欧州逮捕状」や「
第3章までのまとめ
- 日本は「移民国家ではない」と言いつつ、
実質的に定住化を進めている。 - ヨーロッパはすでに経験済みの「統合後回し、治安悪化」
をなぞる可能性が高い。 - 最大の問題は「司法協力の穴」。受け入れは進むのに、
逃亡や国外犯への対応が手薄なまま。
第4章:国別比較 ― 日本で犯罪を犯した外国人の扱い
日本の刑法は「国内で罪を犯した者」に適用されるため、
しかし問題は「帰国してしまった場合」。国ごとに対応が異なり、
韓国
- 日本と犯罪人引渡し条約あり(2002年発効)。
- 韓国に逃亡した場合でも、日本に送還される可能性が高い。
- 実際に強盗殺人事件の犯人が韓国から日本に引渡され、
日本の裁判を受けた事例もある。
中国
- 日本と条約なし。
- 中国は「自国民は自国で裁く」方針を徹底している。
- 日本の警察が国際手配をしても、中国国内で裁判が開かれるため、
日本の被害者遺族は「なぜ日本で裁けないのか」 という不満を持つ。
ブラジル
- 日本と条約なし。
- 憲法で「自国民は外国に引渡さない」と規定。
- 必ずブラジル国内で裁かれる。
- 実際に日系ブラジル人が日本で殺人を犯して帰国し、
ブラジルで懲役31年の判決を受けたケースがある。 日本なら死刑や無期懲役だった可能性が高い事件。
ナイジェリア
- 日本と条約なし。
- ナイジェリア刑法には国外犯を裁ける規定があるが、
実務では審理が遅れたり、軽刑になったりする懸念がある。 - 麻薬事件で帰国したナイジェリア人が、
実質的に軽い処罰しか受けなかった事例もある。
アメリカ
- 日本と条約あり(2003年発効)。
- アメリカ国内に逃げても、日本に引渡される可能性がある。
- ただし「死刑になる事件」
ではアメリカ側の裁判所が慎重になるケースが多い。
第5章:各国の「殺人罪の最高刑」比較表
国 | 最高刑 | コメント |
![]() | 死刑・無期懲役 | 絞首刑。適用例あり。 |
![]() | 死刑 | 制度ありだが1997年以降執行なし。 |
![]() | 死刑 | 世界最多クラスの執行数。銃殺・注射。 |
![]() | 30年懲役 | 憲法で死刑禁止。最長30年で刑が終わる。 |
![]() | 死刑または無期懲役 | 州によってイスラム法を併用。 |
![]() | 死刑または無期 | 州によって死刑の有無が異なる。 |
![]() | 無期懲役 | 1981年に死刑廃止。 |
![]() | 無期懲役 | 1949年に死刑廃止。 |
日本なら死刑になる事件が、
第6章:具体的な事例
中国人窃盗団事件
2000年代、
日本は国際手配をしたが、中国は「自国で裁く」として引渡さず。
最終的に中国国内で裁判が行われ、有罪判決が下された。
日系ブラジル人殺人事件
日本で殺人を犯したブラジル人が帰国。
ブラジル憲法により日本への引渡しは拒否。
ブラジル国内で懲役31年の判決。
日本の遺族からは「軽すぎる」との声が強かった。
韓国人強盗殺人事件
日本で強盗殺人を犯した韓国人が帰国。
条約に基づき日本へ引渡され、日本の裁判で有罪判決。
第7章:ヨーロッパの歴史と日本の比較
ヨーロッパの流れ
- 1950年代〜:経済成長で労働者不足 → 大量受け入れ(ガストアルバイター、旧植民地移民)
- 1970〜80年代:定住化が進むが、統合政策は後回し。
- 1990〜2000年代:治安悪化や暴動(例:
2005年パリ郊外暴動)。 - 2004年:欧州逮捕状(EAW)導入、司法協力を本格化。
日本の現状
- 2019年:特定技能創設(労働力受け入れ開始)。
- 2023年:特定技能2号拡大(定住ルート化)。
- 2024年:育成就労制度成立(2027年施行予定)。
- 引渡し条約は米韓2本のみ。
日本はいま「ヨーロッパで言えば1980年代〜90年代」
つまり「受け入れは進むが、司法協力・治安対策は遅れている」
第8章:日本の国会での議論
参議院請願(ブラジルとの条約)
- 「逃亡犯が国外へ行けば司法が及ばず、逃げ得になる」として、
ブラジルとの引渡し条約を求める請願が提出された。 - 当時、
ブラジル人逃亡犯86人が日本でもブラジルでも処罰されていない 状態だった。
国家公安委員会での議論
- 議員:「刑事共助条約と引渡し条約は連動しているのか?」
- 官房長:「引渡し条約は米国・韓国のみ。他国とは交渉中」
外務委員会
- 日韓引渡し条約承認の際、政府は「積極的に進める」と答弁。
- しかしその後、進展はほとんどなし。
懸念の声は国会にあるが、実際の制度整備は進まない。
第9章:なぜ日本は遅れているのか?
- 移民政策タブー
「日本は移民国家ではない」という建前を守るため、制度を小出しに。大改革を避ける。 - 短期的経済優先
経済界の「人手不足をすぐ解決せよ」という圧力を優先。司法整備は票にならず後回し。 - 外交難易度
ブラジルは憲法で引渡し禁止、中国は「自国で裁く」原則。交渉そのものが困難。 - 社会的議論不足
「治安リスクを語ると排外的」と批判されやすく、冷静な議論が深まらない。
第10章:最悪のシナリオと結論
- 外国人が日本で殺人を犯す。
- 母国に逃げ帰り、日本で裁けない。
- 自国で軽刑、あるいは不起訴。
- 遺族は「日本の司法は何をしているのか」と絶望。
ヨーロッパはすでに「経済優先 → 治安悪化 → 司法協力強化」という道を歩みました。
日本はいま、同じ轍を踏んでいます。
結論:
日本は「外国人を入れること」にばかり目を向け、「
このままでは、
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