【第2回のテーマ】
第1回では「台湾問題の基本(歴史・構造)」を解説しました。
第2回となる今回は、“いま現実に進んでいる動き” を中心にまとめます。
- 中国が台湾に実際に何をしているのか
- 台湾はアメリカとどんな関係になっているのか
- 日本はどれほど巻き込まれるのか
- 台湾社会の変化(若者の価値観・独立意識)
- もし有事が起きたらどんな順番で進むのか
- 世界の企業や経済はどう動いている?
「ニュースを見るたび台湾が出るけど、何が起きているの?」
第1章:いま台湾と中国の関係はどうなっているの?
台湾と中国の関係は、
一言でいうと「戦争はしないが、圧力はどんどん強くなっている」
という状態です。
◆ ① 中国軍機の台湾周辺への侵入が過去最大
中国は毎日のように軍機(戦闘機・爆撃機)
その数は年々増加しており、
2020年 → 年200回弱
2023年 → 年1000回以上
と、5倍以上に増えています。
これは台湾を militarily “疲れさせる” 戦略。
- 常に警戒が必要
- 戦闘機の稼働が増えて消耗
- 台湾国民に心理的プレッシャー
これを “グレーゾーン戦略” と呼び、
中国は戦わずして台湾の意志を弱らせようとしています。
◆ ② 中国の「海上封鎖シミュレーション」が増えている
中国は台湾周辺で軍事演習を行っていますが、
最近は単なる演習ではなく
✔ 「台湾を封鎖する練習」に明らかに変わってきている
理由は、
中国が台湾を武力攻撃するとき、最初に行うのが「海と空の封鎖」
最新の演習は:
- 台湾の北・南・東を包囲
- 空母を投入
- ミサイルを台湾の南に落とす
- “台湾完全包囲”の地図を公式発表
など、
「出口を全部ふさぐ」 内容になっています。
◆ ③ 経済的な圧力(台湾の輸入品への制限)
中国は台湾に対し、経済カードも使っています。
例:
- 台湾の農産物の輸入停止
- 台湾の食品検査を厳しくする
- 観光客の中国人を台湾へ行かせない
これにより台湾経済をじわじわ弱らせる狙いがあります。
第2章:台湾の“内部”はいまどうなっている?
台湾の国内事情も大きく動いています。
◆ ① 若者の9割以上が「自分は台湾人」
最新調査では
- 「自分は台湾人」 → 90%超
- 「中国人だと思う」 → 3%前後
- 「両方だと思う」 → 減少傾向
これが中国を苛立たせる最大要因の1つです。
中国は「台湾人は中国人だ」と主張しますが、
現実はどんどん台湾人意識が強まっています。
◆ ② 台湾人の多くは「現状維持」を希望
台湾人が望む未来は以下の通り:
1位:現状維持(今のまま国っぽい状態)
2位:正式独立
3位:中国との統一(圧倒的に少ない)
最も多いのが
✔「今のまま、実質独立で平和に暮らしたい」
という姿勢。
◆ ③ 台湾は軍備を急速に強化
台湾はいま、急ピッチで軍備を増強しています。
- 徴兵制を1年に戻す
- アメリカから兵器を大量購入
- ステルス戦闘機の導入
- 台湾版“ドローン戦力”を拡大
- 海外での軍事訓練を増加
理由は、
ロシア・ウクライナ戦争を見て「守り方」が変わった から。
第3章:アメリカは台湾にどこまで関わっている?
アメリカは台湾を守るために、
ここ数年で関与を明らかに強めています。
◆ ① 台湾に兵器を大量供給
アメリカは台湾に次々と兵器供与を決めています。
- PAC-3ミサイル
- ハイマース(多連装ロケット)
- F-16V戦闘機
- 海軍用ミサイル
- ドローン
これはウクライナ支援と同じ構図で、
戦争を起こさせないため先に準備している という戦略。
◆ ② 台湾には“アメリカ軍がすでに少数駐留”
アメリカは
「台湾に米軍はいない」と建前では言っていますが、
近年の報道では
特殊部隊や海兵隊が台湾で訓練を行っている
ことが実質的に明らかになっています。
これは台湾防衛へのコミットメントを示すサイン。
◆ ③ アメリカは台湾海峡を“国際海域”と明言
中国は「台湾海峡は中国の海」と主張しますが、
アメリカは完全に否定。
そのためアメリカ軍艦は
台湾海峡を毎月のように通過 し、
自由航行作戦を行っています。
これは中国への牽制です。
第4章:日本はどれだけ台湾と関係が深い?
日本は地理的にも経済的にも台湾と密接です。
いま日本の立場は大きく3つのポイントがあります。
◆ ① 台湾有事=沖縄有事
台湾の北側は“与那国島(よなぐに)”。
たった110kmです。
そのため、
✔ 台湾で戦争が起きれば、確実に日本も巻き込まれる
米軍基地は沖縄に集中しているため、
中国のミサイル攻撃対象になる可能性もあります。
◆ ② 日本は“台湾海峡の平和は日本にとって重要”と政府が明言
2021年以降、日本政府は公式文書で
「台湾海峡の平和と安定は日本にとって死活的に重要」
とはっきり書いています。
これは日本にとって極めて異例の表現で、
台湾への関心が非常に高まっている証拠。
◆ ③ 日本企業は台湾の半導体と超密接
特にTSMCとの関係は大きいです。
- 熊本にTSMC工場を建設
- 日本の半導体産業を復活へ
- 自動車メーカーもTSMCと連携
日本にとって台湾の半導体は“生命線”です。
第5章:台湾有事が起きたら何が起きる?
ここからは、
もし「台湾有事」が現実になった場合の、
“起こり得る順番”を専門家の分析をもとに
初心者向けにまとめます。
◆ ① 第0段階:サイバー攻撃
台湾の銀行・政府サイト・電力網が攻撃を受けます。
同時に日本・アメリカにもサイバー攻撃が起きる可能性。
◆ ② 第1段階:中国軍の包囲(海と空)
中国は「上陸」より先に、
台湾を外界から完全に孤立させる封鎖を行います。
- 台湾への船の出入り禁止
- 台湾上空の封鎖
- 周辺にミサイル着弾
- 台湾の港に向けて威嚇射撃
これにより台湾の物資が止まり、
国際社会は大混乱になります。
◆ ③ 第2段階:ミサイル攻撃
中国のミサイル数は世界最大級。
台湾のレーダー・通信基地を狙う可能性があります。
ただし、台湾には
最新のミサイル迎撃システム PAC-3 もあるため、
防衛はある程度可能。
◆ ④ 第3段階:上陸作戦(可能性は最も低い)
台湾海峡は荒れやすく、
上陸作戦は中国にとって極めてハイリスクです。
- 損害が大きい
- 世界からの制裁も確実
- 経済ダメージが中国自身に跳ね返る
そのため専門家は
「中国は上陸よりも封鎖戦を選ぶ可能性が高い」
と見ています。
第6章:半導体産業はいまどう動いている?
台湾問題は“半導体”が核心にあります。
◆ ① 台湾TSMCは世界の最重要企業
TSMCは世界の先端チップの9割以上を製造。
台湾問題が世界経済に直結する理由がこれ。
◆ ② 世界は“台湾依存”を減らそうとしている
- 日本(熊本にTSMC)
- アメリカ(アリゾナにTSMC)
- ドイツ(TSMC進出)
- 韓国(サムスン増強)
これは「台湾で戦争が起きても経済が止まらないように」
◆ ③ それでも台湾の優位は簡単には揺るがない
なぜならTSMCの技術は10年先を走っているから。
- ナノレベルの工程技術
- 専門人材
- 世界のサプライチェーン
これは“簡単に移転できない産業”。
第7章:世界は台湾問題をどう見ている?
台湾問題は今、
世界の価値観対立の象徴になっています。
● アメリカ・日本・欧州 → 台湾支持
民主主義・自由を守る立場。
● 中国・ロシア → 台湾は中国の領土
権威主義側の立場。
台湾問題=「自由 vs 権威主義」の最前線
となっているため、世界が注目しているのです。
第8章:まとめ(第2回の要点)
- 中国は軍事・経済・心理戦で台湾を圧迫
- 台湾では若い世代ほど独立意識が強い
- アメリカは兵器供与・駐留で台湾防衛を明確化
- 日本は地理的にも経済的にも台湾と密接
- 台湾有事が起きれば日本も直撃する
- 世界は「台湾依存の半導体」を分散し始めている
- 台湾問題は自由主義 vs 独裁国家の対立の象徴




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