―「専守防衛」の現在地と中国が本当に恐れていること―
はじめに
「日本が軍事大国になる」
「戦争できる国になる」
日本の防衛力強化について、
こんな不安や批判を耳にすることがあります。
一方で中国は、日本の防衛政策に対して
以前よりも明らかに強い警戒感を示しています。
なぜ日本が“少し変わっただけ”で
中国はここまで神経質になるのか?
第3回では、
日本の防衛力が実際にどう変わったのか
そして
中国が恐れているポイントはどこなのか を、
事実ベースで整理していきます。
1. そもそも「専守防衛」とは何だったのか
日本の防衛を語る上で欠かせないのが
専守防衛という考え方です。
専守防衛の基本
- 相手に先に攻撃された場合のみ反撃
- 必要最小限の防衛力
- 他国を侵略しない
つまり日本は、
「自分から殴りに行かない」
ことを大前提にしてきました。
この方針自体は、今も変わっていません。
ただし、
「守り方」が現実に合わせて変わってきただけです。
2. 日本の防衛力は「質」が変わった
よく誤解されますが、
日本は突然、兵力を何倍にも増やしたわけではありません。
変わったのは 量ではなく質 です。
最近の主な変化
- 南西諸島(沖縄・与那国など)への部隊配備
- ミサイル防衛や迎撃能力の強化
- 情報・監視・警戒能力の向上
これはすべて、
「最初の一撃を受け続ける国」にならないための準備
とも言えます。
3. 「反撃能力(敵基地攻撃能力)」とは何か
中国が特に強く反発しているのが、
この 反撃能力(敵基地攻撃能力) です。
これは何を意味するのか?
簡単に言えば、
日本が攻撃を受け、
さらに攻撃が続くと判断した場合、
発射元を無力化する能力
です。
重要なのは、
先制攻撃ではない
防衛目的に限定
という点です。
にもかかわらず中国が警戒する理由は明確です。
4. 中国が恐れているのは「日本が黙らないこと」
中国にとって理想的なのは、
- 日本は後方支援
- 実質的な抑止はアメリカ任せ
- 日本は積極的に口を出さない
という状況でした。
しかし日本が、
- 自分で守る意思を明確にする
- 攻撃され続けない選択肢を持つ
- 台湾有事を自国防衛と結びつける
ようになったことで、
中国は日本を“交渉相手”として扱わざるを得なくなった
のです。
これは中国にとって、
非常に都合の悪い変化です。
5. 日本は「戦争する国」へ向かっているのか?
結論から言えば、
その可能性は低いと言えます。
なぜなら――
- 防衛政策は国会と世論の監視下
- 軍の暴走を許さない文民統制
- 攻撃条件は極めて厳格
があるからです。
むしろ現実は、
戦争を避けるために抑止力を高めている
という方が近いでしょう。
6. 中国が本当に恐れている日本の姿
中国が恐れているのは、
ミサイルや兵器そのものではありません。
本当に警戒しているのは、
- 日本が「何もしない国」ではなくなる
- 日本が自分の言葉で安全保障を語り始めた
- 日本が米国の影に隠れなくなった
という 姿勢の変化 です。
これは第1回・第2回で触れた
「日本の目覚め」という流れと、
完全につながっています。
第4回予告
第4回
中国が嫌がる「日本の経済安全保障」とは何か?
― 半導体・脱中国・静かに進む分断 ―
次回は、
「戦争」よりも現実的で、
私たちの生活に直結する 経済と技術の話です。




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