海外と比べて分かった「日本の異常な立ち位置」― 税率は中位、満足度は下位になる理由 ―

話題

「日本は税金が高すぎる国だ」

この言葉は、感情としては理解できる。しかし、数字だけを見れば必ずしも正しくない。

実際、日本の税・社会保険負担は、先進国の中では中位程度に収まっている。

それにもかかわらず、なぜ日本の現役世代はこれほどまでに「報われない」と感じるのか。

この違和感の正体は、海外との比較を行うことで、はっきりと見えてくる。

「税率が高い国」=「現役世代が不幸な国」ではない

まず前提として押さえておきたいのは、

税率の高さと、現役世代の満足度は必ずしも比例しないという事実だ。

OECDの指標(Tax Wedge)で見ると、

現役世代(独身・平均賃金)の実質負担はおおむね以下の水準にある。

  • ベルギー:約52%
  • ドイツ:約48%
  • フランス:約47%
  • 北欧諸国:約43〜45%
  • 日本:約33%
  • アメリカ:約26%

この数字だけを見れば、日本は

「むしろ軽い方ではないか」

と感じる人もいるだろう。

だが、ここで判断を止めてしまうと、最も重要な点を見誤る。

決定的な違いは「負担の後に何が返ってくるか」

海外と日本の差は、

どれだけ取られるかではなく、

取られた後に何が返ってくるかにある。

■ ドイツ・北欧諸国の場合

たとえば ドイツ や

スウェーデンデンマーク などの北欧諸国では、

  • 教育費はほぼ無償(大学まで自己負担が極小)
  • 医療費の自己負担が軽い
  • 失業時の所得保障が厚く、再挑戦がしやすい
  • 子育て支援が制度として安定している

つまり、

高負担だが、高確率で生活を守ってもらえる

という構造がある。

現役世代は税や保険料の重さを感じながらも、

「いざという時は社会が支える」という実感を持ちやすい。

■ フランスの場合

現役世代の負担が世界でもトップクラスに重い国だ。

それでもフランスでは、

  • 家族手当・住宅補助が非常に厚い
  • 子どもが増えるほど可処分所得が改善するケースがある
  • 共働き・子育て世帯が制度的に守られやすい

その結果、

独身者は厳しくても、子育て世帯では逆転現象が起きることすらある。

ここでも重要なのは、

「負担の重さ」ではなく「返り方」だ。

日本の立ち位置は「中負担・低還元」

税・社会保険の負担水準だけ見れば中位に位置する。

しかし現役世代の実感は、明らかに厳しい。

その理由は明確だ。

  • 教育費:私費負担が大きい
  • 住宅:公的支援が乏しい
  • 子育て:給付があっても増税・保険料で相殺されがち
  • 老後:制度変更リスクが高く、将来が見えにくい

つまり日本は、

「欧州ほど守られず、米国ほど稼げない」

という、最も不満が溜まりやすいポジションに置かれている。

アメリカとの比較が示す、もう一つの現実

アメリカ は、日本より手取りが多い。

  • 税・社会保険負担は軽い
  • 昇給すれば、手取りが素直に増える

その一方で、

  • 医療保険は自己責任
  • 失業や病気で生活が急変するリスクが高い

アメリカは

低負担・低保障・高自己責任

の国だ。

それでも「稼げば報われる」という感覚がある分、

現役世代の納得感は日本より高いケースも少なくない。

なぜ日本だけが「不満が最大化」するのか

ここまでを整理すると、日本の問題ははっきりする。

  • 負担は中程度
  • 保障は弱い
  • 将来は不透明

この3点が同時に存在する国は、実は珍しい。

高負担・高保障でもなく、

低負担・低保障でもない。

中負担・低保障・高不安

これが、日本の現役世代が置かれている状況だ。

「日本はまだマシ」という言葉の落とし穴

よく言われる反論に、

「日本は治安も良いし、まだマシでは?」

というものがある。

だがこれは、現役世代の負担構造の問題をすり替えている。

治安やインフラの良さと、

「働いた対価が報われるか」は別問題だ。

現役世代が不満を抱いているのは、

生活水準の低下そのものではなく、

努力と結果が結びつきにくい構造

に対してである。

第2回の結論

海外と比較して見えてきたのは、

日本が「高税国家」だから苦しいのではない、という事実だ。

日本が特殊なのは、

  • 負担はそこそこ
  • しかし現役世代への直接リターンが弱く
  • 将来の見通しも立てにくい

という 設計そのもの にある。

次回は、この構造が

年収400万・600万・800万円という具体的な数字の中で、どのように表れるのか

を、手取りベースで見ていく。

▶ 次回予告(第3回)

「なぜ昇給しても豊かにならないのか」

年収別の手取り比較から、日本の現役世代が感じる“報われなさ”を数字で可視化する。

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