最近、「企業倒産が増えている」「従業員が辞めたことで会社が倒産した」といったニュースを目にする機会が増えています。会社が倒産する理由と聞くと、売上の減少や多額の借金、経営者の判断ミスなどを思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、現在の日本では、仕事や注文があるにもかかわらず、従業員を確保できないことや、中心となる社員が退職したことによって事業を続けられなくなる企業が増えています。
特に深刻なのが、従業員や経営幹部などの退職が直接または間接的な原因となる「従業員退職型倒産」です。帝国データバンクによると、2026年1月から7月までに確認された従業員退職型倒産は83件となりました。前年同期の74件から9件増え、増加率は約12.2%です。2022年以降、5年連続で増加しており、2026年は過去最多を更新する可能性が極めて高い状況です。
この記事では、なぜ今、従業員の退職や人手不足を原因とする倒産が増えているのか、現在のペースは過去と比べてどの程度深刻なのか、倒産が多い業種、一般の生活や働く人への影響、企業に求められる対策について、初心者にも分かりやすく解説します。
そもそも企業の「倒産」とは何か
倒産とは、会社が借入金や仕入代金、従業員の給与、税金などを支払えなくなり、事業を続けることが難しくなった状態を指します。ただし、「倒産」という言葉自体に法律上の厳密な定義があるわけではありません。一般的には、破産、民事再生、会社更生、特別清算などの法的整理に入った場合や、銀行取引が停止された場合などが倒産として扱われます。
企業は赤字になった瞬間に倒産するわけではありません。一時的な赤字であっても、手元に現金があり、銀行から融資を受けられれば事業を続けられます。逆に、帳簿上は利益が出ていても、支払いに必要な現金を用意できなければ倒産することがあります。これが、いわゆる「黒字倒産」です。
現在増えている人手不足倒産や従業員退職型倒産も、退職者が出た瞬間に会社がなくなるわけではありません。もともと利益が少ない、借入金が多い、価格転嫁ができないといった問題を抱えていた企業で、従業員の退職が最後の一押しとなり、事業継続を断念するケースが多いと考えられます。
2026年の倒産はどれくらい増えているのか
東京商工リサーチによると、2026年7月の全国企業倒産は1,028件でした。前年同月より6.9%増え、2カ月連続で1,000件を超えています。月間の倒産件数が2カ月以上続けて1,000件を超えたのは、2012年2月から5月以来、約14年ぶりです。また、7月としては2013年以来、13年ぶりの高い水準となっています。
2026年1月から7月までの累計は6,374件で、前年同期より7.1%増加しました。現在の勢いが続けば、2026年の年間倒産件数は1万1,000件を超える可能性があります。年間1万1,000件を超えれば、2012年以来の高水準です。
さらに注目したいのは、倒産している企業の規模です。2026年7月は、負債額1億円未満の倒産が795件となり、全体の約77%を占めました。東京商工リサーチの集計では、従業員10人未満の企業が倒産全体の約9割を占めています。つまり、有名な大企業が次々と倒産しているというより、地域の小売店、飲食店、建設会社、運送会社、介護事業者など、小規模な企業が静かに事業を続けられなくなっているのです。
従業員退職型倒産は過去最多のペース
帝国データバンクによると、2026年1月から7月までの従業員退職型倒産は83件です。前年同期は74件だったため、9件、約12.2%増加しました。2025年の年間件数は124件で、調査開始後初めて100件を超えましたが、2026年はそれをさらに上回る勢いです。
83件を7カ月で割り、単純に12カ月分へ換算すると、年間では約142件となります。このままのペースが続けば、2025年の124件を約18件上回る計算です。ただし、これはあくまで単純計算であり、実際の件数は今後の景気や人手不足、物価、資金繰りなどによって変化します。
83件という数字だけを見ると、全国の倒産件数に比べて少ないように感じるかもしれません。しかし、この集計は負債1,000万円以上で法的整理となった企業が対象です。経営者が高齢になって静かに店を閉めたケース、赤字になる前に自主廃業したケース、負債1,000万円未満の小規模事業者などは含まれていません。そのため、人手不足や従業員の退職によって実質的に事業継続を断念した企業は、統計に表れる数字より多い可能性があります。
参考:帝国データバンク「従業員退職型の倒産動向(2026年1-7月)」
なぜ従業員が辞めると会社が倒産するのか
大企業であれば、従業員が数人退職しても、別の部署から応援を出したり、新しい人を採用したりして対応できます。しかし、小規模企業では、一人の従業員が複数の重要な仕事を担当していることが珍しくありません。
例えば、小さな建設会社では、資格を持つ職人や現場をまとめる責任者が一人しかいないことがあります。運送会社では、限られた人数のドライバーが配送を支えています。小売店では、店長や発注担当者、鮮魚・精肉などの技術者が中心となって売場を運営しています。介護施設では、有資格者が不足すると、受け入れられる利用者数を減らさなければならない場合があります。
このような会社で中心人物が退職すると、仕事を受注できない、店舗を通常どおり営業できない、配送できない、サービスの品質を維持できないといった問題が起こります。残った従業員に仕事が集中すれば、長時間労働や休日出勤が増え、さらに退職者が出る可能性があります。
その結果、「一人が辞める」「残った人の負担が増える」「さらに人が辞める」「売上が落ちる」「資金繰りが悪化する」という悪循環に陥ります。従業員の退職は単なる人事上の問題ではなく、企業の存続を左右する経営リスクになっているのです。
倒産増加の原因① 物価高と原材料価格の上昇
現在の倒産増加を考えるうえで、最も大きな問題の一つが物価高です。企業が使用する原材料、包装資材、電気、ガス、燃料、物流、外注費など、さまざまなコストが上昇しています。
帝国データバンクによると、2026年7月の物価高倒産は121件となり、2018年の集計開始以降で過去最多を更新しました。前年同月の90件から34.4%増加しており、8カ月連続で前年を上回っています。主な要因は、原材料価格の上昇と人件費の増加です。
本来であれば、仕入価格が上がった分を商品やサービスの価格に上乗せすれば、企業は利益を守れます。しかし、中小企業は取引先との関係や顧客離れを恐れ、十分な値上げができない場合があります。大企業から仕事を請け負う下請け企業では、自社だけの判断で価格を変更することが難しいケースもあります。
スーパーや飲食店でも、仕入価格が上がるたびに販売価格を引き上げれば、お客様が安い店へ流れる可能性があります。そのため、企業側がコスト上昇の一部を負担し、利益を削って営業を続けることになります。しかし、この状態が長期間続くと、賃上げや設備投資に使う資金がなくなり、最終的には事業そのものが維持できなくなります。
倒産増加の原因② 賃上げしたくても原資がない
物価が上がると、従業員の生活費も増えます。そのため、従業員は企業に賃上げを求めるようになります。大企業を中心に高い賃上げが発表されると、働く人は自分の給与と他社の給与を比較しやすくなります。
企業側も、従業員を引き留めるために賃上げが必要なことは理解しています。しかし、原材料費や電気代、燃料費が上昇し、販売価格への転嫁も進まない状態では、賃上げの原資を確保できません。
利益が出ていないのに無理な賃上げを行えば、会社の資金繰りが悪化します。反対に賃上げを行わなければ、従業員が待遇の良い会社へ転職してしまいます。現在の中小企業は、「賃上げすると経営が苦しくなるが、賃上げしなければ人が辞める」という難しい状況に置かれています。
特に、同じ地域に大企業や全国チェーンが進出している場合、地域の中小企業が賃金面で競争することは簡単ではありません。時給だけでなく、休日数、福利厚生、労働時間、教育制度などにも差があるため、若い人材ほど条件の良い企業へ移りやすくなります。
倒産増加の原因③ 少子高齢化による働き手の減少
日本では少子高齢化が進み、働く世代そのものが減少しています。企業が求人を出しても応募者が集まらない、採用できても短期間で辞めてしまうという問題が多くの業界で起きています。
人が足りなければ、既存の従業員一人ひとりの仕事量が増えます。残業や休日出勤が増え、休暇を取りにくくなれば、職場に残っている人まで疲弊します。「人が足りないから忙しい」「忙しいから人が辞める」「人が辞めるからさらに忙しくなる」という悪循環です。
さらに、建設業、自動車整備業、運送業、食品製造業などでは、長年働いてきた熟練者の高齢化も進んでいます。ベテラン社員が定年や体調不良で退職しても、技術や経験を引き継ぐ若手がいなければ、会社は同じ水準の仕事を続けられません。
単純に採用人数を増やすだけでは解決できず、技術の継承、作業の標準化、機械化やデジタル化などを同時に進める必要があります。しかし、資金や時間に余裕のない小規模企業ほど、こうした対策が遅れやすいのが実情です。
倒産増加の原因④ 転職しやすい時代になった
以前の日本では、一つの会社に長く勤めることが一般的とされていました。しかし現在は、転職に対する抵抗感が小さくなっています。求人サイトや転職サービスをスマートフォンで利用でき、自分の給与が他社と比べて高いのか低いのかも調べやすくなりました。
人手不足の企業が多い状況では、経験や資格を持つ従業員は、比較的短期間で次の勤務先を見つけられます。特に、建設職人、トラック運転手、介護職、IT技術者、営業担当者などは、他社から必要とされやすい人材です。
会社への不満があっても転職先が少なければ、従業員は現在の職場に残る可能性があります。しかし、より高い給与や良い勤務条件を提示する会社があれば、無理をして今の会社に残る必要はありません。
企業にとっては、新しい人を採用できない「求人難」だけでなく、現在働いている人を守れない「人材流出」が大きな問題になっています。採用活動に力を入れる一方で、既存の従業員への説明、評価、教育、休暇の確保、仕事量の調整などをおろそかにすると、退職者が増える可能性があります。
倒産増加の原因⑤ コロナ禍からの回復が不十分
新型コロナウイルスの感染拡大時には、実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」などによって、多くの企業が当面の資金を確保しました。この支援によって、本来なら資金が尽きていた企業も事業を継続できました。
しかし、融資は給付金ではないため、原則として返済が必要です。売上や利益が十分に回復しないまま返済が始まり、そこへ原材料高、光熱費上昇、人件費増加が重なっている企業もあります。
コロナ禍を乗り越えたように見えても、その間に借入金が増え、手元資金が減り、設備が古くなっている企業があります。こうした企業では、従業員が数人辞めたり、主要な取引先を失ったりするだけで資金繰りが急速に悪化します。
ゼロゼロ融資だけが現在の倒産増加を引き起こしているわけではありませんが、企業の体力が十分に回復しないまま、次の物価高と人件費上昇が来たことが大きな負担となっています。
従業員退職型倒産が多い業種
2026年1月から7月までの従業員退職型倒産を業種別に見ると、最も多いのはサービス業の22件で、全体の26.5%を占めました。老人福祉施設や美容室など、人が直接サービスを提供する業種で多く発生しています。
次に多いのが建設業の20件です。現場作業を担当する職人や営業担当者が相次いで退職し、工事や受注を続けることが難しくなったケースが目立ちます。建設業では資材価格や外注費も上昇しているため、人手不足とコスト高が同時に経営を圧迫しています。
運輸・通信業は12件で、特に貨物自動車運送業などが増えています。運送会社ではドライバー不足に加えて、燃料費や車両価格、修理費、保険料なども上昇しています。運賃を十分に引き上げられない企業は、ドライバーの賃上げを行えず、退職を止められない状況に陥ります。
これらに共通するのは、機械だけでは仕事が完結せず、従業員の技術や経験に大きく依存している点です。人が辞めた後に新しい人を採用しても、すぐに同じ仕事ができるとは限りません。そのため、中心人物の退職が企業の売上やサービス提供能力へ直結します。
小売業やスーパーも無関係ではない
従業員退職型倒産で最も多いのはサービス業や建設業ですが、小売業やスーパーも無関係ではありません。小売業は一見すると、特別な資格がなくても働ける仕事が多いように見えます。しかし実際の店舗運営では、経験を積んだ従業員の判断や技術に支えられている部分が多くあります。
例えば、商品の発注担当者が退職すると、売れ筋商品の欠品や過剰在庫が増える可能性があります。鮮魚、精肉、総菜などでは、加工技術を持つ従業員が不足すると、売場そのものを縮小しなければならないことがあります。店長や副店長など管理できる人が不足すれば、営業時間を短縮したり、休業日を増やしたりする必要も出てきます。
人が足りない状態で営業を続ければ、品出しやレジ応援、清掃、売価変更、発注などが十分に行えなくなります。売場の品質が下がれば、お客様の満足度が低下し、売上も落ちます。クレームが増えることで従業員の精神的負担が大きくなり、さらに退職者が増える可能性もあります。
小売業では「売上を上げること」だけでなく、「限られた人数でも安全に店舗を運営できる仕組みを作ること」が重要になっています。不要な作業の削減、発注の自動化、作業手順の統一、担当者しか分からない仕事の共有などが、今まで以上に必要です。
大企業より中小企業が厳しい理由
中小企業は、日本の雇用を支える重要な存在です。しかし、人手不足や物価高に対する耐久力は、大企業より弱い傾向があります。
大企業は大量に仕入れることで価格交渉をしやすく、複数の取引先を持っているため、一社からの仕入れが止まっても別の会社へ切り替えられます。金融機関から資金を調達しやすく、採用活動や従業員教育にも多くの資金を使えます。
一方、中小企業は取引先が限られ、販売価格や請負価格を自社だけで決めにくい場合があります。大きな値上げをすれば仕事を失う可能性があるため、コスト上昇分を自社で負担しがちです。
また、従業員数が少ないため、一人の退職による影響が大きくなります。10人の会社で2人が辞めれば、人員が20%減ることになります。100人の会社で2人が辞めるのとは影響がまったく異なります。
経理、営業、現場管理、採用などを一人の経営者や少数の社員が兼務している会社も多く、誰かが長期間休むだけでも業務が止まる可能性があります。帝国データバンクも、従業員10人未満の小規模企業で人手不足倒産が多いことを指摘しています。
「会社が弱いから倒産した」だけでは説明できない
倒産した企業に対して、「経営努力が足りなかった」「賃金を上げなかった会社が悪い」と考える人もいるかもしれません。もちろん、経営判断や職場環境に問題があるケースもあります。
しかし、現在の倒産増加は個別企業の努力不足だけでは説明できません。原材料価格、エネルギー価格、為替、人手不足、少子高齢化、社会保険料、最低賃金、金利など、企業だけではコントロールできない要因が同時に重なっています。
特に中小企業は、賃上げをしたくても、その費用を販売価格へ反映できなければ継続できません。価格を上げれば顧客を失い、価格を据え置けば利益を失うという難しい選択を迫られます。
重要なのは、企業に対して一方的に賃上げを求めるだけではなく、適正な価格転嫁を社会全体で受け入れることです。商品やサービスの価格を必要以上に抑え続けると、最終的には賃金、雇用、品質、事業の継続にしわ寄せが生じます。
今後も倒産は増えるのか
今後の倒産件数は、物価、金利、為替、個人消費、賃上げ、金融機関の支援姿勢などによって変わります。ただし、少なくとも短期的には高い水準が続く可能性があります。
企業にとって、原材料価格や人件費の上昇は一時的な問題ではなくなっています。最低賃金が上がれば、パートやアルバイトだけでなく、正社員との賃金バランスも見直す必要があります。社会保険料や採用費、教育費なども含めると、一人を雇用するための負担はさらに大きくなります。
一方で、働く人の数が急に増える可能性は低く、建設、運輸、介護、小売、外食などの人手不足は続くと考えられます。今後は、売上が少ない企業だけでなく、一定の売上があっても、必要な人員を確保できない企業が事業を断念するケースが増えるかもしれません。
ただし、すべての企業が倒産へ向かうわけではありません。早い段階で値上げや不採算事業の整理を行い、作業を効率化し、従業員が辞めにくい環境を整えた企業は生き残る可能性があります。
企業が取り組むべき対策
まず必要なのは、仕事や技術を特定の一人に集中させないことです。「その人がいなければ発注できない」「その人しか取引先との交渉方法を知らない」という状態は大きなリスクです。作業手順を文書化し、複数の従業員が担当できるようにする必要があります。
次に、従業員が辞める兆候を早めに把握することも重要です。退職者が出てから理由を調査するのでは遅い場合があります。残業時間、休日取得、職場の人間関係、評価への不満、業務量などを定期的に確認し、小さな不満の段階で対応することが必要です。
賃金だけですべてを解決することはできません。勤務時間を選べるようにする、希望休を取りやすくする、不要な会議や報告を減らす、教育体制を整えるなど、資金を大きく使わずに改善できることもあります。
さらに、不採算の商品、サービス、取引先を見直すことも必要です。売上が大きくても利益が出ない仕事を続ければ、従業員の負担だけが増えます。売上高ではなく、商品や取引ごとの利益と作業時間を確認し、限られた人員を利益の出る仕事へ集中させることが重要です。
価格転嫁についても、単純に「値上げします」と伝えるだけでなく、原材料費、物流費、人件費などの上昇を具体的に説明し、取引先や顧客の理解を得る努力が求められます。
働く人が確認しておきたい倒産の兆候
倒産は突然発生するように見えても、事前に何らかの変化が現れることがあります。例えば、給与の支払いが遅れる、経費の精算が止まる、仕入先から商品が入らなくなる、主要な取引先との契約が終了する、経理担当者や幹部が相次いで辞めるといった変化です。
ほかにも、社会保険料や税金の滞納、急な賞与削減、設備の修理を極端に避ける、現金払いを強く求められる、経営者と連絡が取れないなども注意が必要です。ただし、これらの一つが起きただけで、すぐに倒産すると決まるわけではありません。
会社の経営状態に不安を感じた場合は、給与明細、雇用契約書、就業規則、退職金に関する資料などを確認しておくことが大切です。未払い賃金が発生した場合は、労働基準監督署や未払賃金立替払制度などへ相談できる可能性があります。
従業員にとっても、会社の状況を冷静に確認し、自分と家族の生活を守る準備をしておくことが重要です。
倒産増加は私たちの生活にも関係する
企業倒産は経営者や従業員だけの問題ではありません。地域のスーパー、運送会社、建設会社、介護施設、飲食店などがなくなれば、地域住民の生活にも影響します。
運送会社が減れば、配送コストが上がり、商品の価格へ反映される可能性があります。建設会社や修理会社が減れば、住宅の建築や修理を依頼しても、すぐに対応してもらえなくなるかもしれません。介護施設が閉鎖すれば、利用者や家族は別の施設を探す必要があります。
企業が減ることで地域の雇用や税収も減少します。人口の少ない地域では、代わりとなる企業がすぐに見つからず、生活に必要なサービスそのものが維持できなくなる恐れがあります。
値上げは消費者にとって負担ですが、企業が適正な利益を確保できなければ、雇用やサービスを維持できません。安さだけを求め続けるのではなく、商品やサービスを継続的に提供するために必要な価格について、社会全体で考える必要があります。
まとめ
2026年は、企業倒産全体が過去十数年と比べても高い水準で推移しています。2026年7月の全国企業倒産は1,028件となり、2カ月連続で1,000件を超えました。1月から7月までの累計は6,374件で、前年同期より7.1%増えています。
従業員や経営幹部の退職が原因となる「従業員退職型倒産」は、2026年1月から7月までに83件発生しました。前年同期より12.2%多く、このまま単純計算すると年間約142件となり、2025年の過去最多124件を上回るペースです。
倒産増加の背景には、原材料費やエネルギー価格の上昇、価格転嫁の難しさ、賃上げ原資の不足、少子高齢化、採用難、熟練者の退職、転職市場の活発化、コロナ禍からの回復不足などがあります。
現在の状況は、「売れない会社が倒産する」という単純なものではありません。仕事があっても、人がいないため受注できない企業、売上があっても、コスト上昇を価格へ反映できず利益を残せない企業が増えています。
企業には、適正な価格転嫁、従業員の待遇改善、仕事の標準化、複数担当制、作業の効率化、不採算事業の見直しなどが求められます。同時に、取引先や消費者にも、企業が雇用とサービスを守るための適正価格を受け入れる姿勢が必要です。
今後の企業倒産を考えるうえでは、倒産件数だけを見るのではなく、「なぜ利益を出せないのか」「なぜ人が辞めるのか」「人が辞めても事業を続けられる仕組みがあるのか」という点を見ることが重要です。従業員の退職は、もはや一企業の人事問題ではありません。日本の地域経済や暮らしを左右する、大きな社会問題になりつつあります。
※本記事の数値は、2026年8月11日時点で公表されている帝国データバンクおよび東京商工リサーチの資料を基にしています。両社では集計対象や「人手不足倒産」の定義が異なるため、数値を単純に比較できない場合があります。



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