日本では近年、外国人の増加や外国人による犯罪がニュースになる機会が増えています。そこで気になるのが、「外国人が日本国籍を取得した後に犯罪を起こした場合、元の国籍は統計に残っているのか?」という問題です。結論からいうと、現在警察庁が一般に公開している犯罪統計では、「現在中国籍」「現在ベトナム籍」といった国籍別の数字を見ることはできますが、帰化して日本国籍になった人について「元中国籍の日本人」「元ベトナム籍の日本人」といった形で犯罪件数や検挙人員を確認できる通常の公開統計は、私が確認した警察庁の公表資料には見当たりません。警察庁は2026年8月に2025年の犯罪情勢を確定値へ更新し、令和8年警察白書でも2016~2025年の「来日外国人の主な国籍別検挙状況」を公開しています。つまり外国籍の人については国籍別の犯罪統計がかなり詳しく存在します。
まず「外国人犯罪」という言葉に注意
ニュースでよく見る「来日外国人犯罪」には注意が必要です。警察庁が使用する「来日外国人」は、日本にいる外国籍の人すべてと同じ意味ではありません。2025年の警察庁資料では、比較対象となる在留外国人数について、永住者、永住者の配偶者等、特別永住者を除いた約349万人を示しています。その中では中国が21.7%、ベトナム18.2%、ネパール7.6%、インドネシア6.9%などとなっています。
ですから「来日外国人の犯罪件数」をそのまま「日本に住む外国人全員の犯罪率」と解釈するのは正確ではありません。この統計上の違いは、外国人犯罪について議論するときにもっと知られていいポイントだと思います。
中国籍などの犯罪統計は実際に公表されている
警察庁は2025年についても来日外国人の国籍別検挙状況を公表しています。刑法犯だけでなく特別法犯についても2016~2025年の推移を確認できます。さらに2025年の総検挙状況では、ベトナムと中国の2か国が高い割合を占めていることを警察庁自身が明記しています。
つまり政府が外国人犯罪の国籍をまったく公表していないわけではありません。むしろ現在外国籍である人については、かなり詳しい情報があります。
問題は日本国籍を取得した後です。
中国籍から日本国籍になった人は毎年数千人いる
法務省によると、2025年に帰化が許可された人は9,258人でした。そのうち中国籍だった人は3,533人で最も多く、2024年の3,122人、2023年の2,651人から増えています。
つまり例えば、
中国籍で来日
↓
日本で生活
↓
帰化申請
↓
日本国籍取得
↓
その後犯罪で検挙
となった場合、現在の国籍を基準にすれば、その人はもう「外国人」ではなく日本人です。
したがって警察庁の「中国籍の検挙人員」には、その人を中国籍として含めることはできません。
ここは外国人犯罪統計を見る際の重要な限界です。
では「元国籍」を匿名統計として出せばいいのでは?
ここで出てくるのが今回の疑問です。
個人名、住所、勤務先などを公開する必要はありません。
例えば、
「2025年に刑法犯で検挙された日本国籍者のうち、帰化によって日本国籍を取得した人○人」
さらに、
「帰化前中国籍○人、韓国・朝鮮籍○人、ベトナム籍○人……」
という全国単位の匿名集計を公表する方法は考えられます。
これは「犯罪を起こした○○さんは元中国人だった」と個人情報を公開する話とは全く違います。
そして政策評価という意味では、検討する価値があると思います。
ただ「人数」だけ出しても意味がない
ここがものすごく重要です。
仮に政府が、
「元中国籍の検挙者500人」
と発表したとします。
これだけでは中国出身者の犯罪傾向についてほとんど何も分かりません。
例えば元中国籍の日本人が5万人いて500人なのか、50万人いて500人なのかで意味が全く違うからです。
したがって必要なのは、
犯罪者数だけではなく分母です。
「元中国籍から帰化した現在の居住人口」
「そのうち検挙された人数」
をセットにしなければなりません。
さらに年齢と性別も重要です。
例えば20~40代男性が多い集団と、高齢者や子どもまで含む日本人口全体を単純比較すれば、犯罪率の比較として歪みが生じます。
本当に知りたいのは「人口10万人当たり」
理想的なのは、
人口10万人当たりの刑法犯検挙人員
です。
さらに、
日本国籍・出生時から日本国籍
日本国籍・帰化者
現在外国籍
を同じ条件で比較します。
そして帰化者については、
元中国籍
元ベトナム籍
元フィリピン籍
元ネパール籍
元韓国・朝鮮籍
その他
など、一定以上の人数が存在するカテゴリーについて匿名集計する方法が考えられます。
ただし少人数の国籍については個人特定につながる可能性があるため、「○人未満はその他へまとめる」といった統計上の処理も必要でしょう。
犯罪の種類も分ける必要がある
さらに「犯罪」という一括りも良くありません。
窃盗と殺人では社会的意味が全く違います。
そのため、
窃盗
詐欺
傷害
暴行
強盗
殺人
性犯罪
薬物犯罪
などを分ける必要があります。
入管法違反などは、日本人には基本的に成立しない犯罪なので、日本人との犯罪率比較からは分けて考えるべきでしょう。
ここまで揃えて初めて、
「帰化者の犯罪率は日本人平均より高いのか、低いのか、変わらないのか」
をまともに議論できます。
なぜ現在はそこまで公表されていないのか
ここについて「政府が何かを隠している」と断定する根拠はありません。
現在の犯罪統計は基本的に、現在の法的身分や国籍などに基づいて作られています。帰化した人は法律上日本国民なので、過去の国籍を使って日本人を分類することは別の統計設計になります。
さらに「元外国籍」を追跡するのであれば、
帰化した本人だけを見るのか。
日本生まれの子どもはどうするのか。
片方の親が中国出身の場合はどうするのか。
何世代まで追跡するのか。
という問題も発生します。
そのため、「現在の国籍別統計」と「民族・ルーツ別統計」は全く別物として考える必要があります。
それでも「帰化者」というカテゴリーなら検討できる
私はここが現実的な落としどころだと思います。
民族や親の出身国まで永久に追跡する必要はありません。
例えば、
「本人が外国籍から日本国籍へ帰化したかどうか」
だけなら比較的明確です。
さらに政策研究目的なら、
帰化後5年以内
5~10年
10年以上
などに分ける方法も考えられます。
これなら「何世代前まで外国人だったか」という民族的な分類とはかなり性質が違います。
数字を公開することは外国人を批判するためだけではない
ここも重要です。
もし統計を作った結果、
帰化者の犯罪率
↓
日本人平均より低い
となったらどうでしょう。
「外国人が帰化すると治安が悪化するのではないか」という不安をデータによって否定できます。
逆に、
特定の層だけ高い
という結果なら、その原因を調査できます。
例えば、
生活困窮
就労環境
言語問題
犯罪組織
在留制度
教育
などに原因があるのかもしれません。
その部分だけ対策すればいい。
つまり統計は、
外国人を批判するためではなく、問題が本当に存在するのか確認するため
に使うべきです。
実際に警察庁はかなり細かい犯罪統計を持っている
警察庁は刑法犯について、認知件数、検挙件数、検挙人員、都道府県別、罪種別、人口10万人当たりなど非常に多くの統計を公開しています。2025年分も確定値が公開されています。
また来日外国人についても国籍別の10年間の推移を公開しています。
だから外国人400万人時代に合わせて、外国人・永住者・帰化者を含めた新しい犯罪統計の設計を議論すること自体は不自然ではありません。
一方で「中国人だから犯罪が多い」と結論づけるのはまだ早い
これまで調べてきた数字から非常に大切なのがここです。
中国籍から日本へ帰化する人は2025年に3,533人いました。
しかし、
帰化した元中国籍の人が何人犯罪を起こしているのか
という公開統計を確認できない以上、
「帰化した中国人の犯罪が多い」
とも、
「少ない」
とも判断できません。
ここは「分からない」が正解です。
だからこそ統計が欲しいわけです。
「数字を出さない=問題がある」とも限らない
これも注意したいところです。
統計がないからといって、
「都合が悪いから政府が隠している」
とまでは言えません。
一方で、
「統計がないのだから問題は存在しない」
とも言えません。
どちらも証拠がありません。
現状は、
「判断するための公開データが不足している」
という表現が最も正確でしょう。
これから日本で必要なのは「見える化」
外国人政策について議論すると、
「外国人犯罪が増えている!」
対、
「外国人犯罪率は高くない!」
という対立になりがちです。
しかし本当に必要なのは、その間にある数字です。
外国人人口。
国籍。
在留資格。
年齢。
性別。
刑法犯検挙人員。
犯罪の種類。
永住者。
帰化者。
これらを匿名化したうえで組み合わせれば、かなり精度の高い分析ができます。
そして警察庁自身も統計データについて、統計的利用を目的としたデータ提供要請のための窓口を設けています。
日本はこれから外国人400万人時代を迎える
ここまで外国人人口が増えれば、外国人政策について国民が疑問を持つのは当然です。
治安は大丈夫なのか。
社会保障はどうなるのか。
学校はどうなるのか。
住宅はどうなるのか。
地域コミュニティはどうなるのか。
税金・社会保険料はきちんと払われているのか。
帰化した後はどうなっているのか。
こうした疑問に対して、
「心配する必要はありません」
だけでは納得しない人が出てきます。
逆に、
「外国人が増えたから危険だ」
だけでも政策判断はできません。
必要なのは、
数字です。
私ならこんな統計を政府に出してほしい
「外国人犯罪」という大きなくくりではなく、国籍・在留資格・年齢・性別・罪種別の人口当たり検挙率を公表する。さらに永住者を含めた外国籍全体について比較可能な統計を作り、帰化者についても本人の元国籍を匿名化した全国集計を検討する。そして必ず分母となる人口も同時に公表する。
これなら、
「中国籍だから危険」
でも、
「外国人犯罪は問題ない」
でもありません。
データを見た国民自身が判断できます。
まとめ
現在の警察庁統計では、来日外国人について中国・ベトナムなど国籍別の犯罪統計が公開されています。2025年の警察庁資料でも、中国とベトナムは検挙状況で大きな割合を占めています。
一方、帰化して日本国籍になった人について、「元中国籍」「元ベトナム籍」といった犯罪統計を一般向け公開資料から確認することはできません。
そして2025年だけでも中国籍から日本への帰化許可者は3,533人。帰化許可者全体では9,258人でした。
だからこそ、
「現在外国籍の人」だけの数字を見て、外国出身者全体について結論を出すのは難しい。
しかし同時に、
「帰化者を含めれば犯罪率が高くなるはずだ」と推測することもできません。
データがないからです。
外国人受け入れを今後さらに進めるのであれば、国民の不安を「偏見」と片付けるのでもなく、根拠のない情報で不安を煽るのでもなく、個人を特定できない形で必要な統計を公開し、結果が良くても悪くても示すことが重要だと思います。
結果として問題がなければ、それは外国人や帰化者にとってもプラスの材料になります。
問題が見つかれば、そこへ対策できます。
外国人400万人時代だからこそ、必要なのは「隠す・決めつける」ではなく、比較できる数字を増やすことではないでしょうか。
ブログタイトル案
「なぜ帰化後の元国籍別犯罪統計は公表されない?外国人400万人時代に必要な『見える化』を考える」
SEOを少し強くするなら、「外国人犯罪は本当に増えている?帰化すると統計上は日本人に|元国籍別データがない理由と問題点を解説」も使いやすいです。


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