2026年10月16日、北村晴男参議院議員の公式YouTubeチャンネルで「主権国家の当たり前の主権の行使」という題名のショート動画が公開されました。動画には「移民」「国会」といったハッシュタグも付けられており、外国人の入国・在留・退去を国家がどこまで判断できるのかという問題を改めて考えるきっかけになっています。ただし、ここで最初に整理しておきたいのは、「主権国家だから外国人をいつでも自由に国外退去させられる」という単純な話ではないという点です。日本には出入国管理及び難民認定法、いわゆる入管法があり、外国人がどのような場合に日本へ入国でき、どのような場合に在留を認められ、どのような場合に退去強制の対象になるかが法律で決められています。さらに、退去強制の対象になった場合でも、違反調査、違反審査、口頭審理、法務大臣の裁決など、一定の手続があります。難民条約のノン・ルフールマン原則のように、送り返してはいけない場合もあります。つまり、国家には外国人の入国・在留を管理する権限がありますが、その権限も法律や国際条約に従って行使される必要があります。この記事では、北村晴男議員の今回の発信を入り口に、「外国人が犯罪をしたらすぐ強制送還されるのか」「不起訴でも国外退去になるのか」「在留資格更新と退去強制はどう違うのか」「難民申請をすれば絶対に送還されないのか」「日本には外国人を退去させる権限がどこまであるのか」を初心者向けに順番に整理していきます。
まず「主権国家の権利」とはどういう意味なのか
一般に国家は、自国の領域へ誰を入国させるか、外国人にどのような条件で滞在を認めるかを決める権限を持っています。日本でも、外国人が日本へ上陸するには、有効な旅券や査証を持っていること、予定している活動が在留資格に該当していることなど、入管法で定められた条件を満たす必要があります。出入国在留管理庁も、外国人が上陸するには入管法上の条件を満たさなければならず、許可を受けずに上陸すれば不法入国や不法上陸として退去強制の対象になり得ると説明しています。つまり、日本政府が「外国人なら誰でも自由に入国できる」という制度を採っているわけではありません。誰を入国させ、どのような活動を認めるかを国家が法律に基づいて審査しています。ただし、ここで重要なのは「国家に権限がある」と「何をしてもよい」は同じではないということです。日本には日本国憲法、入管法、行政手続、裁判制度があり、さらに難民条約などの国際的な約束もあります。そのため、国外退去についても「政府が嫌だから追い出す」という運用ではなく、退去強制事由に該当するかどうかを法律に沿って判断する必要があります。
そもそも「退去強制」とは何なのか
退去強制とは、入管法に定められた退去強制事由に該当する外国人を、日本国外へ退去させるための手続です。代表的なのは、不法入国、不法上陸、不法残留、在留資格に反する活動、一部の重大な犯罪などです。ここで大切なのは、「外国人が問題を起こしたら何でも退去強制」という制度ではないことです。法律上、どの行為が退去強制事由に当たるのかが決められており、その条件に該当するかどうかを確認します。実際の退去強制手続の中心は、不法残留などの入管法違反です。つまり、外国人の国外退去というテーマを考えるとき、犯罪だけを見るのではなく、在留期限や在留資格のルール違反も非常に大きな割合を占めていることを理解する必要があります。
犯罪をした外国人は必ず強制送還されるのか
ここは非常に誤解されやすい部分です。外国人が犯罪をしたからといって、すべてのケースで直ちに退去強制になるわけではありません。どの犯罪で、どのような刑罰を受けたか、どの在留資格なのか、退去強制事由に該当するかなどを個別に確認する必要があります。例えば、重大な犯罪で一定の刑罰を受けた場合には退去強制事由に該当することがあります。一方で、軽微な違反や、退去強制事由そのものには該当しないケースもあります。ただし、その場合でも「何も影響しない」という意味ではありません。在留資格変更や在留期間更新の審査では、素行が良好であるかどうかも見られます。つまり、犯罪行為が退去強制事由に直接該当しなくても、将来の在留資格更新で不利に評価される可能性があります。この点から見ると、日本の外国人管理は「強制送還するかしないか」の二択ではなく、退去強制、在留更新、不許可、在留資格変更など複数の仕組みで管理されていることが分かります。
「強制送還」と「在留期間更新を認めない」は違う
この違いを理解すると、外国人政策に関するニュースがかなり分かりやすくなります。退去強制は、入管法上の退去強制事由に該当した外国人を国外へ退去させる手続です。一方、在留期間更新不許可は、「今後も日本に在留し続けることを認めない」という行政判断です。例えば、ある外国人が退去強制事由にまでは当たらない問題行動を起こしたとします。その人が在留期間更新を申請した際、素行不良などが消極的に評価され、更新が認められない可能性があります。更新が認められなければ、在留期限後も日本に残ることはできません。つまり、日本には「犯罪をしたから即強制送還」という仕組みだけではなく、「次の在留を認めない」という形で管理する方法もあります。
不起訴になった外国人はどうなるのか
不起訴についても誤解が多いです。不起訴には複数の理由があります。犯罪の嫌疑が十分でない場合もあれば、嫌疑はあるものの、被害の程度、示談、反省、前科前歴などを考慮して起訴しない起訴猶予もあります。そのため、「不起訴=何もしていないことが証明された」と必ずしも言えるわけではありません。一方で、刑事裁判で有罪になっていない人を単純に犯罪者として扱うことにも問題があります。刑事手続と入管審査は別の制度なので、在留資格更新などでは刑事処分だけでなく、本人の在留状況や素行などを総合的に見ることになります。ただし、その際も行政が根拠なく不利益な判断をしてよいわけではなく、事実関係を慎重に確認する必要があります。今後、外国人の在留審査を厳格化する議論が進む場合、この「不起訴案件をどこまで考慮するのか」は大きな論点になりそうです。
示談が成立したら在留には影響しないのか
示談も刑事事件と在留審査を分けて考える必要があります。被害者との示談が成立すれば、刑事処分が軽くなったり、不起訴になる可能性が高まったりすることがあります。しかし、示談が成立したからといって、その出来事自体が在留審査上完全になかったことになるとは限りません。例えば暴行事件で示談が成立し不起訴になった場合でも、その経緯を在留資格更新でどのように評価するかは別問題です。つまり、刑事事件の処分結果と、今後日本に在留させるかどうかの判断は、関連はしていますが完全に同じではありません。
退去強制はどんな手順で進むのか
外国人が退去強制事由に該当すると疑われた場合、すぐに空港へ連れて行かれてその日のうちに国外退去になるわけではありません。まず入国警備官による違反調査が行われ、その後、入国審査官による違反審査、特別審理官による口頭審理などが進みます。必要に応じて法務大臣の裁決が行われ、最終的に退去強制令書が発付されれば送還へ進みます。こうした手続があるのは、退去強制が本人の生活や家族、仕事を大きく変える非常に強い行政処分だからです。国家が主権を行使する場面だからこそ、間違った判断を防ぐための適正手続が必要になります。
在留特別許可とは何か
退去強制事由に該当した外国人でも、必ず全員が国外退去になるわけではありません。日本には在留特別許可という仕組みがあります。本来なら退去強制の対象となる外国人について、本人の日本での生活状況、家族関係、人道上の事情などを総合的に考慮し、例外的に日本への在留を認める制度です。例えば、日本人の配偶者や子どもがいる、日本で長期間生活している、本人や家族に特別な事情がある、といった点が判断材料になることがあります。ただし、日本人の家族がいるから必ず許可されるわけではありません。あくまで個別判断です。ここにも、治安や在留管理と、人道的配慮とのバランスが表れています。
オーバーステイでも自分から出頭すれば扱いが違う場合がある
日本には出国命令制度もあります。一定の条件を満たした不法残留者が自ら入管へ出頭し、速やかに出国する意思を示した場合には、通常の退去強制とは異なる手続で出国できる場合があります。つまり、不法残留者をすべて同じように扱っているわけではありません。自ら出頭した人、重大な犯罪をした人、単に在留期限を超えてしまった人などで扱いを分けています。これは、制度を守って自主的に解決しようとする人と、摘発まで違反状態を続ける人を同じ扱いにしないためでもあります。
難民申請をすれば絶対に送還されないのか
これも以前とは制度が変わっています。以前は難民認定申請中は原則として送還を停止する仕組みがあり、難民申請を繰り返すことで長期間送還を止め続けることが問題視されました。そのため入管法改正により、一定の場合には送還停止の例外が設けられています。ただし、「難民申請者なら誰でも送還できるようになった」という意味ではありません。日本は難民条約の締約国であり、本当に迫害されるおそれがある人を危険な国へ送り返してよいわけではありません。
ノン・ルフールマン原則とは何か
ノン・ルフールマン原則とは、簡単に言えば「送り返したら生命や自由が脅かされるおそれがある国へ、原則として送り返してはいけない」という考え方です。例えば、政治的意見や宗教などを理由に迫害される可能性が高い人を、その国へそのまま送還することには制約があります。つまり、日本は主権国家として退去強制を行う権限を持っていますが、送還先まで完全に自由に決められるわけではありません。国家主権と国際人権法の境界線がここにあります。
なぜ国外退去させるのに時間がかかることがあるのか
「退去強制が決まっているなら、なぜすぐ帰国させないのか」と疑問に思う人もいるでしょう。しかし実際には、送還にはさまざまな問題があります。本人が旅券を持っていない、国籍確認に時間がかかる、相手国が受入れを認めない、難民認定など別の手続が続いている、送還先で迫害を受ける可能性を確認しなければならない、といった理由です。日本政府が「この人を国外退去させる」と決めても、相手国がその人物を受け入れなければ送還は簡単ではありません。つまり、国外退去は日本国内だけで完結する手続ではありません。
犯罪をした外国人をもっと早く国外退去させる制度は作れるのか
法律を改正すれば、退去強制の対象を広げる議論自体は可能です。例えば、特定の犯罪を対象にする、刑罰の基準を変更する、在留資格更新をより厳格にする、再入国禁止期間を長くする、といった方法があります。ただし、「厳しくすればいい」だけでは制度は作れません。軽微な犯罪まで国外退去にするのか、日本人配偶者や日本で暮らす子どもがいる場合はどうするのか、不起訴案件をどこまで評価するのか、裁判が終わる前に送還していいのか、難民保護との関係をどうするのか、といった線引きが必要になります。つまり政策を厳格化する場合ほど、具体的な基準作りが重要になります。
永住者なら何をしても日本にいられるのか
これも違います。「永住者」という名前から、一度永住資格を取得すれば何があっても日本に住み続けられると考える人もいますが、そうではありません。2027年4月からは、一定の入管法上の義務違反、故意の公租公課不払い、一定の犯罪で拘禁刑を受けた場合などについて、永住者の在留資格取消しに関する制度が変わります。ただし、一度の軽微な遅延や不注意で機械的に永住資格を取り消す制度ではなく、本人の状況や故意性、支払い能力、違反の程度などを見ながら判断する仕組みです。ここからも、日本の外国人政策が「受け入れる一方で、長期在留者についてはルール順守をより重視する」方向へ進んでいることが分かります。
永住資格取消し=即強制送還ではない
永住資格が取り消された場合でも、それがそのまま即時国外退去を意味するわけではありません。事情によっては、別の在留資格へ変更して日本への在留を継続できる可能性があります。例えば永住資格を維持するには問題があるものの、日本人家族との関係などを考えると、日本での在留そのものまで否定する必要はないと判断されるケースです。つまり、永住資格取消しと退去強制は別の仕組みです。
日本の外国人管理は甘いのか厳しいのか
これは単純に「甘い」「厳しい」で評価するのは難しいです。日本には不法残留者への摘発、退去強制、在留資格更新審査、入国拒否、永住資格取消しなど、さまざまな仕組みがあります。一方で、退去手続に時間がかかるケース、国外退去対象者が長期間国内に残るケース、不起訴案件を在留審査でどこまで考慮するかといった課題もあります。そのため、より厳格な管理を求める意見があります。一方で、入管収容や難民審査について、人権保障をもっと強めるべきだという意見もあります。外国人政策では、治安・在留管理と、人権・適正手続の両方を考える必要があります。
「主権国家だから退去させられる」という言葉をどう理解すればいいのか
北村晴男議員の「主権国家の当たり前の主権の行使」という表現を、日本の制度に即して考えると理解しやすくなります。日本には、誰を入国させるかを審査する権限、在留期間を決める権限、在留資格更新を許可・不許可にする権限、一定の外国人を退去強制する権限があります。この意味では、外国人の入国・在留管理は主権国家としての重要な権限です。しかし同時に、その権限は入管法、行政手続、裁判制度、難民条約、人権保障などのルールの中で行使されます。つまり、「国家には退去させる権限がある。しかし法律と手続を無視して自由に追い出せるわけではない」という理解が最も分かりやすいでしょう。
外国人犯罪の議論では「件数」だけを見ると危険
今後、外国人犯罪を考える場合も注意が必要です。外国人の犯罪件数だけを見ても、日本に住む外国人の人数自体が増えれば件数も増える可能性があります。そのため、見るべきなのは外国人人口、犯罪率、在留資格、犯罪の種類、再犯率、日本人との比較などです。逆に、「外国人犯罪は問題ない」と一括りにするのも正確ではありません。どの犯罪が増えているのか、どの在留資格で起きているのか、再犯が多いのかなど、細かいデータを見る必要があります。政策を議論するなら、件数だけでなく母数を含めた比較が重要です。
不法滞在と合法的な在留外国人は分けて考える必要がある
「外国人」という言葉には、非常にさまざまな人が含まれます。永住者、日本人の配偶者、留学生、特定技能、育成就労、短期滞在者、不法残留者、難民認定申請者などでは法律上の立場がまったく違います。合法的に長期間日本で暮らしている人と、不法残留している人を同じ「外国人」という言葉だけで議論すると、制度の違いが分からなくなります。外国人政策を考えるときは、在留資格や在留状況ごとに分けて見る必要があります。
今後日本が厳格化するとすれば、どこが焦点になるのか
今後の外国人政策では、犯罪や重大な素行不良を起こした外国人の在留更新をどこまで厳格にするか、退去強制事由を拡大するか、永住者の在留管理をどうするか、公租公課の支払いをどう確認するか、難民認定と送還の関係をどう整理するか、不法残留者の退去をどう迅速化するか、再入国禁止期間をどうするか、といった点が焦点になる可能性があります。一方で、厳格化するほど適正手続も重要になります。国外退去は後から簡単に元に戻せる処分ではないからです。
今後の国会質疑で注目したいポイント
北村晴男議員が今後この問題を国会でさらに取り上げる場合、注目したいのは具体的な数字や運用です。例えば、退去強制事由には当たらない犯罪・素行不良を在留更新でどこまで考慮しているのか、不起訴事件の情報を入管当局がどのように扱っているのか、再犯を繰り返す外国人への更新審査をどうしているのか、退去強制令書が出ても送還できていない人が何人いるのか、送還できない主な理由は何か、難民申請を利用した送還回避への対策はどうなっているのか、ノン・ルフールマン原則との整合性をどう取るのか、といった点です。ここまで政府答弁で具体的な数字が出てくれば、外国人政策の実態がかなり分かりやすくなります。
国民側も「即国外退去」という言葉だけで判断しない方がいい
外国人が犯罪をしたというニュースを見ると、「なぜすぐ国外退去させないのか」と思う人もいるでしょう。しかし実際には、有罪になったのか、どの刑罰なのか、退去強制事由に該当するのか、家族関係はあるのか、難民保護の対象ではないか、どの国へ送還するのか、相手国は受け入れるのか、といった確認が必要です。一方で、「手続があるから何年かかっても仕方ない」と考えるのも違います。必要な手続を守りながら、対象となる人を適切かつ迅速に処理できる制度を作ることが重要です。
日本に必要なのは「受入れ」と「管理」をセットで考えること
現在の日本は、人手不足対策として特定技能や育成就労などを通じて外国人労働者の受入れを拡大しています。一方で、永住者の在留管理や公租公課の支払い、在留ルールの厳格化も進めています。外国人を多く受け入れれば、在留管理、税金、社会保険、犯罪、日本語教育、地域社会との共生など、さまざまな問題も増えます。だからこそ「受け入れるだけ」でも「追い出すだけ」でも制度は成り立ちません。受入れ条件を明確にし、ルールを守って生活する人には安定した在留を認め、重大な違反をする人には法律に基づいて適切に対応するという両方の考え方が必要です。
まとめ|日本には外国人の入国・在留・退去を管理する権限があるが、それは法律と手続の中で行使される
北村晴男議員が2026年10月16日に公開した「主権国家の当たり前の主権の行使」という発信は、外国人の入国・在留・国外退去を誰が決めるのかという重要な論点を含んでいます。日本は主権国家として、外国人の入国を審査し、在留期間を決め、一定の条件に該当する外国人を退去強制する権限を持っています。一方で、犯罪をした外国人が全員すぐ国外退去になるわけではありません。犯罪の内容、刑罰、在留資格、退去強制事由への該当性などを確認する必要があり、退去強制事由に該当しなくても在留期間更新などで不利に評価される場合があります。また、退去強制にも違反調査、違反審査、口頭審理、法務大臣の裁決などの手続があります。さらに、日本が国家として送還を決めても、どこへでも自由に送り返せるわけではありません。難民条約のノン・ルフールマン原則により、生命や自由が脅かされるおそれのある国への送還には制約があります。したがって、一番分かりやすくまとめるなら、日本には外国人の入国・在留・退去を管理する主権的な権限がある。しかし、その権限は入管法、適正な行政手続、司法審査、難民条約などのルールの中で行使されるということになります。今後、外国人労働者が増えていく日本では、「何人受け入れるか」だけではなく、「ルール違反をした場合にどう対応するのか」「犯罪や重大な素行不良を在留審査でどう扱うのか」「退去強制手続をどこまで迅速化できるのか」「難民や家族への人道的配慮をどう守るのか」という問題がさらに重要になります。今後の北村晴男議員の国会質疑では、単なる「厳格化」という言葉だけでなく、どの行為を退去強制対象にするのか、不起訴や軽犯罪をどう扱うのか、在留更新不許可との線引きをどうするのかまで具体的な質問が出るかどうかに注目したいところです。




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