スーパーのお菓子売場で、せんべいやあられ、おかきの原材料表示を見て、
「国産米だと思っていたら、外国産米だった」
「米国産やタイ産のお米を使った商品が増えた気がする」
と感じたことはないでしょうか。
日本を代表するお菓子である米菓には、当然、日本のお米が使われていると思っている人も多いでしょう。
ところが最近は、商品の裏面を見ると、
- うるち米(米国産、国産)
- もち米(タイ産)
- うるち米(中国産)
- 米(国産、外国産)
などと表示された商品が見つかることがあります。
なぜ、日本のお菓子に外国産米が使われるようになったのでしょうか。
結論からいうと、主な理由は次のとおりです。
- 国産米の価格が上がった
- 米菓に使う加工用米も不足している
- 米を作る農家が減っている
- メーカーの人件費や物流費も上がっている
- 商品価格を抑えるため、調達先を分散している
ただし、外国産米の使用は最近突然始まったものではありません。
日本は以前から、米菓、みそ、焼酎、米粉などの加工食品向けに一定量の外国産米を利用してきました。
最近の米不足と価格高騰によって、その存在が以前より目立ちやすくなったと考えるのが自然です。
1.そもそも米菓とはどのようなお菓子なのか
米菓とは、お米を主原料として作られるお菓子の総称です。
代表的なものには、
- せんべい
- あられ
- おかき
- 揚げせんべい
- 柿の種
などがあります。
一般的には、せんべいには主にうるち米、あられやおかきには主にもち米が使われます。
家庭で炊いて食べるお米と同じ品種を使う場合もありますが、米菓メーカーは価格や粒の大きさ、膨らみ方、食感などを考え、加工に適したお米を仕入れています。
そのため、スーパーで売られている主食用米が不足したからといって、米菓メーカーがそのまま店頭のお米を仕入れているわけではありません。
しかし、主食用米の価格上昇は、加工用米や規格外米などの価格にも影響します。
2.外国産米は最近になって使われ始めたわけではない
日本では、外国産米がすべて家庭用のご飯として販売されているわけではありません。
日本が国の制度によって輸入する「ミニマムアクセス米」の多くは、加工食品、飼料、援助などに使われています。
加工食品向けには、米菓のほか、
- みそ
- 焼酎
- 米粉
- 団子
- 加工米飯
などにも利用されます。
農林水産省の資料では、日本酒、米菓、米穀粉などに使用された原料米について、国産米が約78%、ミニマムアクセス米などの外国産米が約22%と推計されています。
この数字は米菓だけの割合ではなく、複数の米加工品を合計したものですが、加工食品の世界では以前から外国産米が一定量使われてきたことが分かります。
つまり、
「昔はすべて国産米だったのに、最近すべて外国産米へ変わった」
という単純な話ではありません。
もともと存在していた外国産米の利用が、国産米の高騰や調達難によって、さらに注目されるようになったのです。
3.最大の理由は国産米の価格上昇
米菓メーカーにとって、お米は商品の中心となる原材料です。
原料米の価格が上がると、商品の製造原価に直接影響します。
2023年産米の高温による品質低下や、その後の需給の引き締まりを背景に、主食用米だけでなく、米菓に使われる加工用米や「ふるい下米」の価格も上昇しました。
ふるい下米とは、米を選別する際に一定の大きさより小さいとして分けられた米です。
炊飯用としては使いにくい場合がありますが、砕いたり粉にしたりする米菓や加工食品には利用できます。
ところが、主食用米の価格が上がると、これまで加工向けに回っていたお米にも需要が集まり、加工用原料まで不足しやすくなります。
食品業界では、米菓やみそに使われる加工用米の供給が厳しくなり、価格高騰以上に「必要な量を確保できないこと」が問題になったと報じられています。
4.米菓メーカーが値上げだけでは対応できない理由
原料米が高くなれば、メーカーは商品の価格を上げればよいと思うかもしれません。
しかし、米菓はスーパーやドラッグストアなどで販売される、比較的単価の低い商品です。
例えば、これまで198円だったせんべいが258円、298円と上がれば、消費者が購入を控えたり、別の商品へ移ったりする可能性があります。
そのためメーカーは、単純な値上げだけでなく、
- 内容量を減らす
- 包装を簡素化する
- 生産を効率化する
- 商品数を整理する
- 原料の仕入れ先を変える
- 国産米と外国産米を組み合わせる
といった複数の方法で対応します。
実際に越後製菓は2025年、国産米の減収による調達難に加え、原材料費、エネルギー費、配送費の上昇を理由として、米菓の価格改定や規格変更、終売を発表しました。
国産米だけが値上がりしているのではありません。
工場で商品を焼いたり揚げたりするための電気・ガス代、包装資材、トラックの配送費、人件費なども上がっています。
メーカーにとっては、あらゆる費用が同時に上がっている状態です。
5.日本のお米は本当に減っているのか
ここで気になるのが、
「日本のお米そのものがなくなっているのか」
という点です。
日本のお米が完全になくなるわけではありません。
ただし、長期的には、お米の生産量と生産基盤は縮小してきました。
日本では食生活の変化によって、1人当たりの米の消費量が長期的に減少してきました。
農林水産省によると、主食用米の需要量は長期的に年間約10万トンずつ減少してきました。
そのため、生産量も需要量に合わせて減らされ、水田では麦、大豆、飼料用米などへの転作が進められてきました。
需要が減っているときは、この仕組みでも大きな問題になりません。
しかし、外食需要や観光需要が回復し、天候不順による品質低下などが重なると、供給に余裕がないため、急に不足感が強まります。
日本のお米は「まったく作られていない」のではなく、長年の需要減少を前提に、生産量を絞ってきたため、急な需要増加に対応しにくくなっているのです。
6.農家の減少と高齢化も深刻
日本のお米を考えるうえで、さらに大きな問題が農家の減少です。
2025年農林業センサスでは、個人経営体の基幹的農業従事者は約102万人となり、5年前より約34万人、率にして25.1%減少しました。
また、2025年の基幹的農業従事者の平均年齢は67.6歳とされています。
つまり、日本の農業は、
- 農家が減っている
- 高齢化が進んでいる
- 後継者が少ない
- 人手が足りない
という問題を抱えています。
高齢の農家が引退しても、必ずしも若い農家が田んぼを引き継ぐとは限りません。
一方で、法人経営や大規模農家への農地集約も進んでいます。2025年農林業センサスでは、農業経営体が減少する一方、法人経営体は5年前より10.1%増えています。
将来は、小さな農家が多数存在する形から、法人や大規模農家が広い農地を管理する形へ変わっていく可能性があります。
ただし、農地を集約するだけで、すべての問題が解決するわけではありません。
機械代、肥料代、燃料代、人件費なども上昇しており、農家が十分な利益を得られなければ、持続的な生産は難しくなります。
7.なぜ外国産米は米菓に使いやすいのか
外国産米が家庭用のご飯よりも、米菓や加工食品に使われやすいのには理由があります。
炊飯してそのまま食べる場合は、
- 香り
- 粘り
- 甘み
- 粒の形
- 冷めたときの食感
などが重視されます。
一方、米菓では、お米を蒸したり、つぶしたり、乾燥させたり、焼いたり、揚げたりします。
さらに、
- しょうゆ
- 塩
- 砂糖
- のり
- チーズ
- 香辛料
などで味付けする商品も多くあります。
そのため、炊飯用ほど品種の違いが表に出にくく、加工方法によって食感や味を調整しやすいのです。
もちろん、外国産米なら何でも同じという意味ではありません。
米菓メーカーは、膨らみ方、硬さ、水分量、割れやすさなどを確認し、商品ごとに適した米を選びます。
8.外国産米を使うことは悪いことなのか
外国産米と聞くと、
「品質は大丈夫なのか」
「安全性に問題はないのか」
と不安になる人もいるでしょう。
しかし、外国産という理由だけで、直ちに危険だとはいえません。
日本で流通する輸入食品は、食品衛生法に基づく輸入手続きや検査の対象になります。
大切なのは、外国産か国産かだけで判断するのではなく、
- 原材料表示
- 原産国
- 製造者
- アレルギー表示
- 賞味期限
- 保存方法
などを確認することです。
国産米100%の商品には、産地の分かりやすさや、日本の農業を支えるという価値があります。
一方、外国産米を使った商品には、価格を抑えやすく、安定して供給しやすいという利点があります。
どちらが絶対に正しいというよりも、消費者が価格や価値を理解して選べる売場にすることが重要です。
9.商品の裏面はどこを見ればよいのか
米菓に使われているお米の産地を確認するときは、パッケージ裏面の「原材料名」を見ます。
例えば、
「うるち米(国産)」
と書かれていれば、使用されているうるち米は国産です。
「うるち米(米国産、国産)」
と書かれていれば、米国産と国産が使われています。
通常、原材料は使用した重量の多いものから順番に表示されます。
ただし、原料の産地は収穫状況や仕入れ状況によって変わることがあり、
- 国産または米国産
- 米国産、国産
- 国内製造
など、商品によって表現が異なります。
ここで注意したいのが「国内製造」という表示です。
国内製造とは、日本国内でその中間原料が製造されたことを示すものであり、その原材料となったお米自体が必ず国産という意味ではありません。
国産米にこだわる場合は、「国産米100%」「新潟県産米使用」など、米そのものの産地が明確に書かれているかを確認しましょう。
10.国産米100%の商品は今後高級品になるのか
今後、国産米100%を使用した米菓は、価格が高めになる可能性があります。
国産米の価格だけでなく、
- 農家の人件費
- 肥料代
- 農業機械代
- 燃料費
- 工場の光熱費
- 包装資材費
- 物流費
が上がっているからです。
メーカーが国産米100%を維持する場合、そのコストを商品価格へ反映せざるを得なくなります。
そのため、米菓売場では今後、
価格を重視する商品
外国産米や国産米とのブレンドを活用し、買いやすい価格を目指す商品。
国産を重視する商品
国産米100%、特定県産米、有機米などを使い、産地や品質を強みにする商品。
という二極化が進む可能性があります。
スーパーとしても、安い商品だけ、国産商品だけに偏るのではなく、消費者が目的に応じて選べる品ぞろえが必要になります。
11.スーパーの売場では何を伝えるべきか
外国産米を使った商品を、隠すように販売する必要はありません。
むしろ、
- お買い得な商品
- 国産米100%の商品
- 産地にこだわった商品
- メーカー独自の製法を使った商品
を分かりやすく分けて伝える方が、お客様に親切です。
例えば売場のPOPで、
「毎日食べやすい、お買い得米菓」
「国産米100%使用」
「新潟県産米にこだわったおせんべい」
など、それぞれの商品の価値を明確にできます。
外国産米だから安物、国産米だから必ずおいしい、という単純な話ではありません。
味付け、焼き方、食感、鮮度、価格など、米菓のおいしさを決める要素は複数あります。
ただし、国産米を使っている商品には、日本の農家や水田を守るという意味もあります。
価格差の理由を売場で伝えることができれば、少し高くても国産米の商品を選ぶお客様は一定数いるでしょう。
12.今後、日本のお米はどうなるのか
日本のお米が近い将来、完全になくなる可能性は低いでしょう。
しかし、これまでと同じ価格で、必要な量をいつでも確保できるとは限りません。
今後の大きな課題は、
- 農家の減少
- 高齢化
- 異常気象
- 生産コストの上昇
- 加工用米の不足
- 需要予測の難しさ
です。
農林水産省は、食料安全保障を重視し、農業の構造転換や、生産者の確保、農地の集約などを進める方針を示しています。
一方、日本産米の輸出も増えています。
2025年の米の輸出数量は4万6,573トンで、2020年の約2.4倍になりました。
ただし、日本全体の米生産量と比べれば、輸出量だけが国内不足の主因とはいえません。
国内の米不足や価格高騰は、需要予測、生産調整、天候、流通、在庫など、複数の要因が重なって起きています。
「海外に輸出しているから、日本のお米がなくなった」と単純化するのは正確ではありません。
まとめ|外国産米の増加は日本の米づくりの転換点
スーパーで外国産米を使ったお菓子が目立つ背景には、単なるメーカーのコスト削減だけでなく、日本の米づくりが抱える構造的な問題があります。
日本では長年、米の消費量が減少してきたため、需要に合わせて生産量も減らしてきました。
その一方で、
- 農家の減少
- 高齢化
- 猛暑などによる品質低下
- 外食需要の回復
- 加工用米の不足
- 原材料費や物流費の上昇
が重なり、国産米を安定して調達することが難しくなっています。
その結果、米菓メーカーは、
- 値上げ
- 内容量の変更
- 商品の終売
- 国産米と外国産米の併用
- 外国産米への切り替え
などの対応を迫られています。
外国産米を使うこと自体が、必ずしも悪いわけではありません。
価格を抑え、商品の供給を続けるためには、外国産米が重要な役割を果たすこともあります。
しかし、国産米の商品を今後も残すためには、消費者がその価格差の理由を知り、納得して選ぶことも大切です。
お菓子の裏面に書かれた小さな原材料表示。
そこには、日本の農業、物価上昇、メーカーの経営努力、そして私たちの買い物の変化が映し出されているのです。




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